井上政重

井上政重（いのうえ まさしげ）は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけての大名であり、江戸幕府の宗門改役を務めた人物です。下総国高岡藩の初代藩主であり、高岡藩井上家の初代当主としても知られています。号は幽山。

生涯

天正13年（1585年）、徳川家康の家臣であった井上清秀の四男として遠江国で生まれました。政重は、寛永4年（1627年）12月29日に従五位下・筑後守に叙任され、そのキャリアをスタートさせました。

寛永9年（1632年）12月17日には、江戸幕府の大目付（当時は惣目付という名称）に任命され、宗門改役を兼務することになりました。この役職は、幕府のキリシタン禁令政策を推進する上で中心的な役割を担うものでした。政重は、幕府のキリシタン対策において重要な人物となり、彼の下屋敷はキリシタンを幽閉する施設（切支丹屋敷）として使用されました。その場所は現在の文京区小日向にあり、近くには「切支丹坂」という坂が残っています。

寛永15年（1638年）には、島原の乱鎮圧のため、幕府の上使として九州に赴きました。その後、寛永17年（1640年）6月12日に1万石を領し、大名に列して下総国高岡藩の初代藩主となりました。さらに、寛永20年（1643年）5月23日には3千石が加増されています。

寛永20年（1643年）には、筑前国で捕らえられたジュゼッペ・キアラ（岡本三右衛門）が江戸へ移送され、政重の下屋敷で取り調べを受けました。また、同時期に発生したブレスケンス号事件に関連して、バタヴィア側から派遣された特使との交渉にも惣目付として対応しました。この際、紅毛流測量術が伝えられたとされています。

正保元年（1644年）12月16日、大目付として宮城和甫と共に、諸大名に正保国絵図・正保郷帳の作成を命じました。

万治元年（1658年）閏12月8日、政重は職を辞し、万治3年（1660年）7月9日には、嫡男である政次が早世したため、政次の嫡男である政清に家督を譲って隠居しました。隠居後は幽山と号しました。

万治4年（1661年）2月27日、文京区小日向の下屋敷にて77歳で死去しました。墓地は当初、文京区向丘の浄心寺にありましたが、後に染井霊園に改葬されています。

後世の評価

アメリカ合衆国の歴史家ジョージ・エリソンは、井上政重をアドルフ・アイヒマンと比較し、その厳しいキリシタン政策を批判的に評価しました。

系譜

父母

父：井上清秀
母：永田氏

正室

太田重正の娘

子女

長男：井上政次

関連作品

遠藤周作の小説『沈黙』では、幕府大目付・宗門改役である井上筑後守として登場します。また、映画『沈黙 -サイレンス-』では、イッセー尾形が長崎奉行の井上筑後守を演じています。

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