正力マイクロ波事件

正力マイクロ波事件

正力マイクロ波事件とは、1950年6月1日に施行された電波三法に関連し、公共と民間の放送事業体が共存する日本で起こった政治的な事件です。この事件は、主に正力松太郎の関与が大きな焦点となり、彼の計画に基づいてマイクロ波通信網を日本に構築する過程が問題視されることになりました。事件は、1954年の参議院通信委員会の決議により、一定の解決を見ました。

背景

この事件は、アメリカの対日政策が大きく転換する中で発生しました。当時のアメリカ中央情報局（CIA）は、正力松太郎に対して合衆国輸出入銀行からの1000万米ドルという巨額の借款を斡旋し、日本におけるマイクロ波通信網の設置を推進しようとしました。正力はテレビ局・日本テレビ放送網（日テレ）の中継網整備を名目に、実質的にはアメリカが主導する技術面での計画を推進することを目指したのです。

この計画の実現には、日本政府からの正式な許可が不可欠であり、また当時のテレビ放送は公共放送に限定されていたため、権限を持つ電波監理委員会からの予備免許の取得が必要となりました。しかし、アメリカ主導の計画に対して、日本国内ではさまざまな反発がありました。特に旧逓信省グループによる抵抗は強く、政治界でも正力の行動に対する批判が相次ぎました。

電波三法とその影響

電波三法は、戦前の電波に関する政府の管理の反省を基に、電波を民間に開放し公共福祉を考慮した規制を建立することを目指しました。この法律の施行により、電波監理委員会が設立され、独立した機関として放送局の開局免許の審査を行うようになりました。

しかし、正力は日テレの開局を急ぎ、他の候補者よりも早く予備免許を取得しようと圧力をかけました。その過程には、多くの対立や論争が巻き起こり、委員会内部でも意見の対立が見られました。

正力とマイクロ波通信

正力によるマイクロ波通信網構築の考えは、彼が公職追放から復帰した後の1952年に具体化しました。彼は、山の頂上にアンテナを設置し、東京から日本中にテレビ放送を広げるマウンテン・トップ方式の構想を発表しました。この中で、余剰の帯域は日本電信電話公社（電電公社）に貸与するといった内容も含まれていました。

この計画が進む中、アメリカの視察団が来日し、正力と共に彼の構想を推進するセッションが行われました。しかし、これに対しても懐疑的な声があり、国民の中には密約説が広まるなど、疑念が高まりました。

結果とその後

1954年には、最終的にさまざまな政治的圧力や、電波監理委員会の決議により、正力に対する借款や通信網の設置計画は一定の決着を見ました。最終的に日本初のテレビ局免許が日テレに与えられましたが、初めに放送を開始したのは、実際にはNHKであったことからも、事件の複雑さが窺えます。この事件は、放送と通信の在り方に大きな影響を与え、日本のメディア環境を形成する一因となったのです。

正力マイクロ波事件は、日本の放送史において非常に重要な出来事であり、政治とメディアの関係性が問われる原点とも言えるでしょう。

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