正法寺 (東松山市)

巌殿山 正法寺：岩殿観音の歴史と文化

正法寺は、埼玉県東松山市にある真言宗智山派の寺院で、巌殿山を山号とし、坂東三十三観音の第十番札所として知られています。一般には岩殿観音の通称で親しまれています。

歴史

寺伝によれば、養老年間（717年 - 724年）に沙門逸海によって千手観音像が刻まれ、正法庵として開山されました。鎌倉時代初期には、源頼朝の命により比企能員が復興し、頼朝の妻である北条政子の守り本尊であったと伝えられています。その後、天正2年（1574年）に栄俊が中興開山となり、天正19年（1591年）には徳川家康から寺領二十五石の朱印地を与えられました。

境内

岩殿丘陵の最東端に位置し、物見山のすぐ隣に位置するため、寺は急傾斜地を切り崩したような場所にあります。東方面に開けており、多くの樹木に囲まれているため、山寺の雰囲気が漂います。

観音堂

養老年間の創建と伝えられる観音堂は、寛永、天明、明治と三度の再建を経て、現在の建物は明治11年（1871年）の火災で焼失した観音堂を、翌年高麗村白子（現在の飯能市）の長念寺から移築したものです。本尊の千手観音は、室町時代の作と伝えられています。

仁王門

表参道から石段を少し登ったところに、「巌殿山」の額を掲げた仁王門があります。左右には仁王像が安置されており、右手には本堂があります。観音堂へは、この仁王門から長い階段を登る必要があります。

銅鐘（梵鐘）

元亨2年（1322年）に鋳造された銅鐘は、外面に無数の傷が付いています。これは天正18年（1590年）の豊臣秀吉による関東征伐の際に、山中を引き回された時の傷であると伝えられています。

鐘楼

元禄15年（1702年）に比企郡野本村（現在の東松山市野本）の山田茂兵衛の寄進によって建立されたと伝えられる草葺き屋根の鐘楼は、東松山市内で最も古い建造物として、東松山市有形文化財に指定されています。

六面幢

天正10年（1582年）に正法寺の僧、道照が建立した六面幢は、埼玉県史跡に指定されています。

判官塚

比企能員の孫である員茂が1218年頃、能員の菩提を弔うために岩殿観音の南東の地である南新井に築いた塚です。大東文化大学東松山キャンパス拡張工事に伴い、現在地に移転しました。

文化財

正法寺は、多くの文化財を保有しています。

正法寺の銅鐘：埼玉県指定有形文化財
正法寺の鐘楼：東松山市指定有形文化財
大イチョウ：東松山市指定天然記念物

参道

仁王門から東にまっすぐに延びる表参道の両脇には家が建ち並び、かつての正法寺と門前町の繁栄の面影を残しています。参道には、屋号のある家がいくつか残っています。昔からの門前町であるため、参道は車両の通行には適していません。参道に並行して南側に交通量の多い県道が通っているため、正法寺への参拝者の多くはこの県道脇の駐車場から観音堂へ直接向かいます。

交通アクセス

鉄道・バス
高坂駅（東武東上本線）西へ約3.2km
高坂駅西口2番バス乗り場から川越観光バス「鳩山ニュータウン」行きに乗車、「大東文化大学」バス停下車徒歩3分
自動車
関越自動車道 東松山ICから約6km
関越自動車道 鶴ヶ島ICから約9km
国道407号「宮鼻」交差点から埼玉県道212号岩殿観音南戸守線で約4km

札所

坂東三十三観音霊場

9番 慈光寺 (埼玉県ときがわ町)
10番 正法寺
* 11番 安楽寺 (埼玉県吉見町)

正法寺は、豊かな自然と歴史に囲まれた、心の安らぎを求める人々にとって訪れる価値のある場所です。ぜひ一度、足を運んでみてください。

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