武三思

武三思（ぶ さんし）

武三思は、唐代の政治家であり、則天武后（武則天）の甥にあたります。武則天の異母兄である武元慶の子として生まれました。その出自から、武則天の信任を得て急速に昇進し、唐朝において重要な地位を占めることになります。

生涯

并州文水県に生まれた武三思は、武則天の一族という背景から右衛将軍に抜擢されます。武則天が政権を掌握すると夏官尚書に任命され、武周が成立すると梁王に封ぜられ、一千戸を賜りました。その後も天官尚書、春官尚書と要職を歴任し、国史監修にも携わるなど、政治家としての地位を確立していきます。

『新唐書』によれば、『即天后実録』の編纂にも関与したとされています。武則天の信任が厚く、寵臣であった張易之・張昌宗兄弟と結託し、権勢をほしいままにしました。また、皇太子になることを画策するなど、野心家としても知られていました。皇太子擁立に関しては、狄仁傑の諫言により実現しませんでしたが、その権勢は衰えることがありませんでした。

中宗の娘である安楽公主が武三思の子である武崇訓に降嫁したことで、武三思の権勢はさらに強固なものとなりました。政敵であった桓彦範・敬暉・袁恕己・崔玄暐・張柬之らを排除し、自らの息のかかった人物を大官に登用するなど、朝政を混乱させました。また、中宗の皇后である韋氏や昭容上官氏と私通するなど、その行動は非難されるべきものでした。

神龍元年（705年）に武則天が退位し、中宗が復位すると、武三思は徳静王に降封されます。しかし、皇太子であった李重俊との不仲から、安楽公主を皇太女として擁立しようと画策したことが李重俊の怒りを買い、神龍3年（707年）に李重俊が兵を挙げて武三思・武崇訓父子とその一族数十名が殺害されるという結末を迎えました。

武三思の死後、中宗は哀悼の儀式を挙行し、太尉を追贈して「宣」と諡しましたが、睿宗が即位すると、武三思父子の逆節を理由にその墓所は破壊されました。

人物像

武三思は、武則天の寵愛を背景に権勢をふるった政治家であり、その権力は朝廷を壟断するほどでした。しかし、その強引な政治手法や私生活における不行跡は、多くの人々の反感を買い、最終的には悲劇的な結末を迎えることになりました。彼の生涯は、権力を持つ者がいかに自らを律し、公正な政治を行うべきかという教訓を示唆していると言えるでしょう。

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