武亭

武亭（ム・ジョン）の生涯

武亭（ム・ジョン、1904年－1952年10月）は、北朝鮮の軍人および政治家として知られ、高く評価された唯一の朝鮮人「革命指導者」として中国共産党の中で重要な役割を果たしました。本名は金武亭（キム・ムジョン）とされていましたが、正確には金炳禧（キム・ビョンヒ）であることが親戚の証言から明らかになっています。彼は延安派の要人として北朝鮮初期の指導部に関与していました。

幼少期と教育

武亭は大韓帝国の咸鏡北道鏡城郡に生まれ、京城（現在のソウル）で育ちました。1919年の三・一運動に参加し、当時の教育機関である中央高等普通学校に通いましたが、在学中に退学し、1923年に中国に渡ります。

北平文化大学で中国語を学び、1924年には北方軍官学校の砲兵科を卒業しました。彼は呂運亨の影響を受け、1925年に中国共産党に入党し、さまざまな戦闘に参加します。上海クーデター後に国民革命軍を離れた後、広州蜂起や労働者の暴動を指導しましたが、逮捕されることとなりました。釈放後は香港に向かいます。

中国共産党での活動

1930年、武亭は彭徳懐の紅軍第5軍に参加し、紅軍の要職を歴任します。特に1934年の長征では中央軍委第1縦隊第3梯隊の指揮官として重要な役割を果たし、紅軍の発展に寄与しました。後には八路軍に改編され、砲兵部隊の創設に携わります。

1938年、彼は八路軍総司令部で砲兵団の団長に任命され、国民党軍との戦闘で武団長としての名声を高めました。日本軍に対する戦いでは幾度も賞賛を受け、特に優れた砲手を育成する能力が評価されました。

光復（解放）後の活動

日本の降伏後、武亭は北朝鮮に帰国し、人民委員会の前身の北朝鮮五道行政局で副委員長に選ばれるも、金日成との対立の中で力を失っていきます。彼は党内での昇進を目指すも、金日成による圧力や改革的な意見の発信が原因で立場を悪化させました。

1948年には中央委員に再選されるも、政治的な圧力と対立が続きました。特に金日成との確執は、彼の活動の足枷となりました。

朝鮮戦争とその後

1950年の朝鮮戦争が勃発すると、武亭は第2軍団長に任命されますが、一連の作戦での失敗や部下の処罰によって解任される運命にあります。最終的には軍籍を剥奪され、囚人として作業に従事することになりました。

その後、病状の悪化に伴い中国に一時的に入院しますが、最終的には北朝鮮に帰国し、1952年に波多野郊外の軍病院で亡くなりました。葬儀は盛大に行われ、国民的な英雄として後世に名を残しました。

人物像と評価

武亭は八路軍内で砲撃術の専門家として知られ、彼の態度は時に高圧的であったため、周囲から批判を受けることもありました。また、彼は古典的な武人としての素質を持ち合わせる一方、政治闘争の能力には欠けていたとされています。彼の評価は複雑ではあるものの、中国共産党の内部での貢献は明らかで、彼の活動は金日成の回顧録においても名を残しています。

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