明倫堂

明倫堂（めいりんどう）

明倫堂は、江戸時代に尾張藩、小諸藩、上田藩、高鍋藩、金沢藩、新庄藩、大洲藩、安志藩といった各藩、そして琉球の久米村に存在した学校です。

各藩の明倫堂

出羽新庄藩の明倫堂

明和年間に設立され、1871年に廃止されました。

信濃小諸藩の明倫堂

享和2年（1802年）に牧野康長が小諸城下・耳取町に創立しました。初代頭取は用人級の村井氏、教頭は給人級の天野氏でした。

信濃上田藩の明倫堂

文化10年（1813年）に松平忠学が上田城下・進参町に創立し、後に演武所を設けて「文武学校」と改称しました。文久2年（1862年）には蘭方医学の「医学所」を併設しました。現在は上田市立清明小学校があり、跡地には上田市立第二中学校が設置されています。

尾州尾張藩の明倫堂

寛延2年（1749年）に創立され、天明2年（1782年）に徳川宗睦が再興し、天明3年（1783年）に開校しました。細井平洲が初代督学（校長）となり、岡田新川、石川香山、冢田大峯、細野要斎らが後を継ぎました。藩士の子弟だけでなく、農民や町人にも儒学や国学を教え、初期の生徒数は約50名でしたが、後に約500名まで増加しました。天明5年（1785年）に聖堂が設けられ、天明7年（1787年）から復刻を行った『群書治要』などの漢籍は明倫堂版と呼ばれ、木活字版が多いです。幕末の改革期には鷲津毅堂（慶応3年（1867年））や小永井小舟らが督学に就任しました。明治時代初頭には教育改革が行われ、明治2年11月（1869年）に「学校」と改称し、明治4年7月（1871年）に廃校となりました。1875年（明治8年）に跡地に名古屋城内から名古屋東照宮が移され、1899年に明倫中学校として復活し、現在は愛知県立[[明和高等学校]]となっています。愛知県立[[明和高等学校]]では、令和７年度から附属中学校が設置される予定です。

加賀金沢藩の明倫堂

11代藩主・前田治脩によって寛政4年（1792年）に設立されました。初代学頭は新井白蛾です。当初は兼六園の南西部に建てられましたが、居館の建立のため文政5年（1822年）に仙石町（現在の四高記念文化交流館と石川県中央公園の一部）に移転しました。経武館が武を重んじたのに対し、明倫堂は儒学等の学問を教える学校でした。教員は読師、助教、教授という身分に分かれ、生徒は下級武士や陪臣などが多く、生徒数は200名乃至300名でほぼ一定していました。設立の目的の一つに身分を区別しない四民教導がありましたが、それ以外への開講は限定的でした。授業内容は和学、天文学、本草学など多岐にわたりましたが、儒学にそった漢字が多くを占めていました。洋学の導入にともない1870年（明治3年）10月に閉校し、翌月に皇学と漢学を教える中学西校が明倫堂と経武館の校舎で開校しました。翌年には洋学中心だった中学東校と合併して金沢中学校となりましたが、翌年四月にこれも閉校しています。後に旧制第四高等学校の一部となり、石川県立野々市明倫高等学校の校名は、この『明倫堂』にちなんでつけられました。

伊予大洲藩の明倫堂

川田雄琴により1740年代に設立が検討され、江戸から三輪執斎の講堂を船で移送する計画がありましたが、財政窮迫などの理由で完成せず、1800年に設立されました。

播磨安志藩の明倫堂

初代教頭は橋本香坡で、1839年に設立されました。

日向高鍋藩の明倫堂

7代藩主・秋月種茂が儒官・千手興欽の進言に基づき安永7年2月24日（1778年）に設立しました。藩士のみならず農民等の一般庶民にも入学させたのが最大の特徴です。5代藩主・秋月種弘の時に学問・武芸の稽古所があった高鍋城三の丸（現在は宮崎県立高鍋農業高等学校の一部）に位置し、従来からの武芸稽古所と併設して藩士の子弟に文武を兼学させました。小学と大学に分かれ、それぞれを行習斎、著察斎と呼んでいました。行習斎には8～9歳で入学し、孝経、大学、論語などの素読や、孝経、小学内外篇の講義、礼式、書道、数学を学びました。行習斎を修了して進む著察斎では各自で講読または会読を行い、教授への質疑や典籍の科目は自由でした。嘉永年間初頭に医学所が設けられましたが、教授が多忙のため中止され、1870年（明治3年）に再開しています。嘉永6年には切偲楼という寄宿寮が設置され、初めの寮生は著察斎から藩費生3名と志願者6名でしたが後に増加して定員50名となりました。開講当時の経費は約36石でしたが、幕末には1,500石まで増えました。職員は家老の稽古大都合以下23人（後に24人）でした。元治元年（1864年）には庶民教育のために椎木郷学校が開校し、次いで美々津（現・日向市）、都農（現・都農町）、平田（現・川南町）、三納代（現・新富町）、福島（現・串間市）に6つの郷学が、さらに小池（現・川南町)、日置（現・新富町）と諸県郡三名（現・国富町）に3校が設立され、明倫堂はこれらを管轄しました。1869年（明治2年）には国学科が設けられ、玉鉾百首や神代正語、万葉集などが教えられました。1873年（明治6年）に廃止され、その後は高鍋島田学校を経て1887年には現在の宮崎県児湯郡高鍋町立高鍋東小学校となりました。明倫堂の書庫は土蔵造で、現在は高鍋町立高鍋図書館構内に蔵書とともに改築されています。明倫堂の教育方法は当時としては画期的で、優秀な人材も沢山輩出したので、「高鍋で学者ぶるな」という諺が日向国内にありました。

琉球の明倫堂

程順則・名護親方寵文の建議により康熙57年（1718年）に久米村内（現在の那覇市久米二丁目二番）の孔子廟境内に創建されました。琉球における最初の正式な教育機関であり、明倫堂では官話のほか経書の講解、詩文や表奏文などの外交文書の作成教授など上級教育を行い、それまで教育の場であった上天妃宮では北京官話や小学の素読など初等教育を行うようになりました。明治期まで学校として機能しましたが、その後廃止され沖縄戦で焼失しました。跡地には記念碑が建てられており、戦後、久米村人の子孫が構成する久米崇聖会によって那覇市若狭に同名の施設が再建され、現在は会議室や図書室として利用されています。

参考資料

日本歴史地名大系（オンライン版） 小学館
至聖廟－社団法人 久米崇聖会HP－

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