武者小路公共

武者小路公共（むしゃのこうじ きんとも）

生涯

武者小路公共は、1882年（明治15年）8月29日に、東京府東京市麹町区（現在の東京都千代田区）で生まれました。父は子爵の武者小路実世で、三男として生を受けました。1887年（明治20年）に父が肺結核で亡くなったため、5歳という若さで武者小路家の家督と子爵の爵位を継承することになります。学習院高等科を経て、東京帝国大学法学部を卒業後、1907年（明治40年）に外務省に入省し、外交官としてのキャリアをスタートさせました。

外務省入省後、上海総領事館での勤務を皮切りに、ルーマニア兼ユーゴスラビア公使、デンマーク兼スウェーデン公使など、ヨーロッパ各地の大使館・公使館で要職を歴任しました。特に、1933年（昭和8年）には駐トルコ大使に、翌1934年（昭和9年）には駐独大使に兼任で就任し、国際的な舞台で活躍しました。国際連盟総会には、第10回から第12回まで日本代表随員として出席し、防共協定締結の交渉においては日本側全権として調印しました。これらの活動を通して、国際社会における日本の立場を確立するために尽力しました。

1938年（昭和13年）に外務省を退官し、宮内省宗秩寮総裁に転じ、1945年（昭和20年）までその職を務めました。第二次世界大戦後、GHQにより公職追放処分を受けましたが、1951年（昭和26年）に追放が解除された後は、日独協会の会長として、日本とドイツの友好関係の発展に尽力しました。没後、正二位に叙せられ、これは三権の長以外では最後の例となりました。

栄典

位階
1940年（昭和15年）7月1日 - 従二位
勲章等
1911年（明治44年）8月24日 - 勲六等単光旭日章
1938年（昭和13年）11月2日 - 勲一等旭日大綬章
1940年（昭和15年）8月15日 - 紀元二千六百年祝典記念章

家族・縁戚

武者小路公共の家族は、日本の文学や政治、学術分野に多大な影響を与えました。

小説家の武者小路実篤は弟。
仏文学者で東京大学名誉教授の武者小路実光は、先妻の萬子（毛利元徳六女）との間に生まれた長男。
旭硝子専務の武者小路公久は、後妻の不二子（伊東義五郎の次女で日仏混血）との間に生まれた次男。
政治学者の武者小路公秀は、後妻不二子との間に生まれた三男。
歴史学者で和光大学名誉教授の武者小路穣は義理の甥。
公爵西園寺八郎は義兄。
参議院議員西園寺公一は義理の甥。

著書

武者小路公共は、その外交官としての経験を基に、いくつかの著作を残しました。これらの著書は、当時のヨーロッパの情勢や国際関係を理解する上で貴重な資料となっています。

『欧洲の近情』霞山会館、1935年12月。
『ベルリン・ローマ・東京枢軸 振り返り見る友邦ドイツの姿』日本外交協会、1938年3月。
『滞欧八千一夜』暁書房、1949年11月。
『道草十万里』日本評論社、1951年2月。
『日本の歩み五十年』早川書房、1951年11月。
『外交裏小路』大日本雄弁会講談社、1952年1月。
『冷戦立見席』大日本雄弁会講談社、1953年5月。

これらの著書は、武者小路公共の外交官としての視点や、当時の国際情勢に対する深い洞察を伝えています。


武者小路公共は、激動の時代を生き抜き、外交官として、また文化人として、日本社会に大きな足跡を残しました。彼の生涯と業績は、現代においても重要な歴史的教訓を与えてくれます。

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