武藤滋夫

武藤滋夫氏は、1950年に生まれ、経済学者としてゲーム理論、社会工学システム、安全システムといった分野を専門としています。

学究生活の初期は、東京工業大学において著名な経済学者である鈴木光男氏のもとでゲーム理論を深く学びました。1972年に提出した卒業論文のテーマは、「資源の最適配分ー私的財産市場から公共財を含む市場へ」というものであり、この頃から資源配分問題にゲーム理論を応用する視点を持っていたことがうかがえます。1974年には、師である鈴木光男氏からの推薦を受け、ゲーム理論研究の世界的権威であるウィリアム・ルーカス氏が在籍するコーネル大学に留学し、国際的な研究環境で研鑽を積みました。

帰国後の1979年には、一時的にランド研究所情報システム部門のコンサルタントとして勤務した後、母校である東京工業大学の助手に着任し、1982年まで教育・研究活動に従事しました。その後、東北大学経済学部に移り、1982年から1990年にかけて助教授を務めました。この東北大学在籍期間中には、1985年から1986年にかけてベルギーのルーバン大学に位置するCORE（Center for Operations Research and Econometrics）にて客員研究員として海外での研究活動を継続しました。また、1987年には「Symmetric games and their stable sets」と題する博士論文を提出し、ゲーム理論における重要な貢献を行いました。

1990年には東北大学経済学部の教授に昇任し、1996年までその職を務めました。この間、1992年から1993年にはオランダのティルバーグ大学CentERにて客員研究員として再び海外で研究交流を行いました。1997年から1998年にかけては東京都立大学経済学部の教授を務め、その後、1998年から2016年までの長きにわたり、東京工業大学大学院社会理工学研究科の教授として、多くの後進の育成と最先端の研究を推進しました。2016年からは東京理科大学経営学部の嘱託教授（専任扱い）として、現在も教育・研究に携わっています。

武藤滋夫氏は、研究活動に加え、ゲーム理論に関する数多くの著作を世に送り出し、その普及に大きく貢献しています。単著としては、『ゲーム理論入門』（日本経済新聞社）、『ゲーム理論』（オーム社）があり、ゲーム理論の基礎から応用までを分かりやすく解説しています。また、鈴木光男氏との共著である『協力ゲームの理論』（東京大学出版会）をはじめ、小野理恵氏、中山幹夫氏、船木由喜彦氏といった著名な研究者たちと共同で、『投票システムのゲーム分析』（日科技連出版社）、『ゲーム理論で解く』（有斐閣）、『協力ゲーム理論』（勁草書房）、『ゲーム理論アプリケーションブック』（東洋経済新報社）といった共同で執筆・編集した著作も多数あります。さらに、ゲーム理論の古典的名著であるジョン・フォン・ノイマンとオスカー・モルゲンシュテルンによる『ゲーム理論と経済行動』の翻訳（中山幹夫氏翻訳協力、勁草書房）も手がけており、この分野の学術資源の普及にも尽力しています。

これらの研究、教育、そして精力的な著作活動を通じて、武藤滋夫氏は日本のゲーム理論研究において重要な役割を果たしており、その貢献は多岐にわたります。

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