武衛陣

武衛陣（ぶえいじん）とは

武衛陣は、室町幕府の有力守護大名であった斯波氏が、京都に構えた邸宅のことで、現在の京都府京都市上京区武衛陣町に位置していました。別名として武衛邸、または勘解由小路邸とも呼ばれ、室町通、下立売通、烏丸通、椹木町通に囲まれた広大な敷地を有していました。

歴史

斯波氏は、斯波高経の時代には七条邸や三条高倉邸などを京都の本邸としていましたが、斯波義将が勘解由小路に邸宅を構えて以降、この地が斯波氏の本邸として長く使用されるようになりました。武衛陣という名称は、斯波義将以降の歴代当主が左兵衛督や左兵衛佐に任じられたことに由来します。これらの官職の唐名である「武衛」から、斯波氏が「武衛家」と呼ばれるようになり、その邸宅が「武衛陣」と呼ばれるようになったのです。

武衛陣の具体的な構造は詳細にはわかっていませんが、斯波家10代当主である斯波義敏が記した『斯波家譜』には、7代当主義淳時代の武衛陣の様子が記録されています。それによると、建物は寝殿造で、室内には「唐鳥」が描かれ、障子には紫色の縁取りが施されていたといいます。また、南庭には蹴鞠の場が設けられ、塀中門の玄関には丸付きの御簾垣が設置されるなど、義淳の好みに合わせた数奇な造りであったことが伺えます。

応仁の乱の頃には、武衛陣は合戦に備えて要塞化が進められました。多くの櫓が建てられ、周囲には堀が巡らされるなど、防御機能が強化されました。実際に、他の大名や将軍の邸宅が戦火で焼失する中、武衛陣は最後まで持ちこたえたとされています。乱後には、戦災で損壊した部分が修復され、引き続き斯波氏の本邸として利用されました。

その後、武衛陣は12代当主の義寛の時代まで斯波氏の本邸として使用されましたが、斯波氏が在京を諦め、領国であった尾張国の清州城に拠点を移すと、次第に放棄されていきました。

戦国時代には、武衛陣の跡地が足利義輝や足利義昭の将軍御所である二条御所として利用されることもありましたが、義輝の二条御所は永禄の変で焼失し、義昭の二条御所は織田信長によって解体されました。

その後、武衛陣の跡地は、将軍や大名の邸宅として使用されることはなくなりましたが、現在でも周辺の地名は武衛陣町と呼ばれており、かつてこの地に武衛陣が存在したことを今に伝えています。

関連事項

斯波氏：室町幕府の有力守護大名。
二条御所：足利義輝と足利義昭の御所は武衛陣の跡地に建てられた。
* 学校法人平安女学院：武衛陣町の大部分が校地となっている。

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