歩兵第59連隊

歩兵第59連隊は、大日本帝国陸軍に所属した歩兵連隊の一つです。第14師団隷下の主要部隊として、日露戦争後から太平洋戦争終結までの激動の時代において、朝鮮半島、中国大陸、満州、シベリア、そして太平洋上の島々など、様々な戦域を転戦しました。

連隊の編成と初期の歩み

連隊の歴史は、日露戦争遂行中の1905年（明治38年）7月17日に編成が命じられたことに始まります。翌月の8月8日には、部隊の象徴たる軍旗を拝受しました。同年9月2日には中国大陸の大連に上陸しましたが、間もなく休戦が成立したため、その後は韓国駐剳軍、後の朝鮮駐剳軍の隷下部隊として京城（現在のソウル）の警備任務に就きました。約1年半の駐屯を経て、1907年（明治40年）2月に日本本土へ帰還します。

帰還後、連隊は所属師団の変更を経験します。1908年（明治41年）10月には、第15師団から第14師団へと編成替えが行われました。さらに、1909年（明治42年）5月19日には、それまでの駐屯地であった千葉県の習志野から、栃木県河内郡国本村宝木（現在の宇都宮市宝木町）へと移転し、以降、同地を拠点としました。

大陸における展開と戦い

連隊はその後、数度にわたり中国大陸やその周辺地域へ派遣されることとなります。大正時代に入ると、1919年（大正8年）にはシベリア出兵に加わり、約1年半に及ぶ厳しい冬の戦線での任務を果たし、日本へ戻りました。

昭和時代に入ると、再び大陸への派遣が続きます。1926年（昭和2年）4月からは満州に駐留し、奉天（現在の瀋陽）に駐屯しましたが、1929年（昭和4年）に帰還しました。しかし、1931年（昭和6年）に満州事変が勃発すると、情勢に対応するため再び出動しました。さらに、1932年（昭和7年）3月7日には、第一次上海事変の戦火が拡大する中、中国の上海に上陸して戦闘に参加します。同年5月5日に停戦協定が成立した後、連隊は再び満州へ派遣され、その地での任務にあたりましたが、1934年（昭和9年）4月には一旦帰還しました。

日中戦争から太平洋戦線へ

1937年（昭和12年）に日中戦争が勃発すると、歩兵第59連隊は再び中国大陸の戦線へと送られます。同年9月3日に塘沽（タンクー）に上陸し、北平（北京）周辺での戦闘や、永定河の渡河戦など、初期の重要な作戦に参加しました。翌1938年（昭和13年）には、大規模な徐州会戦にも加わり、激戦を展開しました。幾多の戦闘を経て、1939年（昭和14年）12月22日に日本へ帰還しました。

しかし、連隊が本土に留まる期間は長くありませんでした。1940年（昭和15年）8月、所属する第14師団が満州への永久駐屯を命じられたことに伴い、歩兵第59連隊も再び大陸へ渡り、満州北部のチチハル（現在のチチハル市）に駐屯しました。以降、太平洋戦争開戦後も長い間、満州での警備や訓練に従事しました。

パラオでの玉砕

戦局が厳しさを増す中で、1944年（昭和19年）3月、第14師団に対し、南太平洋のパラオ諸島への転進命令が下されます。同年4月24日に師団がパラオに到着すると、連隊は各部隊に分かれて配置されました。連隊本部と第1大隊は、米軍の上陸が予想されたアンガウル島の守備にあたることとなり、一方、第2大隊は師団直轄部隊としてバベルダオブ島などで運用されることになりました。

情勢が緊迫する中、同年7月20日、アンガウル島の日本軍守備隊に対し、パラオ本島への転進命令が発せられました。しかし、十分な船舶がなく、部隊の一部のみしか撤退できませんでした。歩兵第59連隊の第1大隊は、他の部隊の一部や海軍部隊とともにアンガウル島に残留し、来たるべき米軍の上陸に備えることになります。

1944年9月17日、米軍はアンガウル島への上陸を開始し、激しい戦闘が繰り広げられました。第1大隊長指揮下の残留部隊は、圧倒的な物量の差にもかかわらず、地下壕などを利用した粘り強い抵抗を続けました。しかし、補給も増援も断たれた孤立無援の状況下、激しい砲爆撃と波状攻撃に晒され、多くの犠牲を出しながらも抗戦を続けましたが、同年10月19日、遂に全員が玉砕し、激しい戦いの末にその歴史に終止符を打ちました。

連隊全体としては、アンガウル島で玉砕した第1大隊以外の部隊はパラオ本島やその他の地域で終戦を迎えました。歩兵第59連隊は、その編成から終戦までの約40年間にわたり、帝国陸軍の主要な作戦の多くに参加し、多様な戦場で過酷な任務を遂行した部隊でした。

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