死せるキリストの哀悼 (ベッリーニ)

ジョヴァンニ・ベッリーニ『死せるキリストの哀悼』

ジョヴァンニ・ベッリーニが1500年頃に板上にテンペラで描いた『死せるキリストの哀悼』（伊: Compianto sul Cristo morto）は、初期イタリア・ルネサンス、ヴェネツィア派の巨匠による作品です。この作品は、十字架から降ろされたキリストを聖母マリアと福音記者ヨハネが支えるという、ベッリーニが生涯にわたり繰り返し描いた主題を扱っています。制作には画家の助手も関わったと考えられており、現在はフィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されています。

歴史

美術史家たちは、この作品がベッリーニの画業の絶頂期、15世紀末から16世紀初頭にかけて制作されたという点で概ね一致しています。ウフィツィ美術館の記録では、制作時期は1485年から1495年頃とされています。

この作品は、もともとヴェネツィア共和国の統領アルヴィーゼ・ジョヴァンニ・モチェニーゴから、宝石で装飾された嗅ぎタバコ入れへの返礼としてトスカーナ大公フェルディナンド3世に贈られました。その後、1798年にフェルディナンド3世は、このテンペラ画をウフィツィ美術館に寄贈し、現在に至ります。

作品の特徴

『死せるキリストの哀悼』の最も注目すべき点は、そのモノクロームの表現です。この点から、準備素描であるという印象が強く、未完成作であると考える研究者もいます。16世紀のヴェネツィアの学者パオロ・ピーノは、ベッリーニが注意深く習作を描き、後に彩色を加えたと述べています。この作品が未完成である可能性は、工房での参考図例、または完成作品の下絵として意図されたためかもしれません。

キアロスクーロで描かれたこの作品は、彩色された絵画のような視覚効果を生み出しています。モノクロームのスケッチでありながら、非常に高度な芸術性を示しており、板には下塗りが施されていないにもかかわらず、絵具の層が確認できます。ヴェネツィア派といえば色彩豊かな表現が特徴ですが、この作品はジョヴァンニ・ベッリーニが、父ヤーコポ・ベッリーニ同様、卓越した素描家であったことを示しています。

他のベッリーニの『キリストの哀悼』の構図と比較すると、この作品はより多くの人物で構成されています。中央には、死せるイエス・キリストが座っており、その両側では聖母マリアと福音記者ヨハネが感情をあらわにしながらキリストを支えています。画面左側には、マグダラのマリアとアリマタヤのヨセフの姿も見られます。さらに、画面上部には、少女、禿頭の髭を生やした男、そして長い髭のある年配の修道士ニコデモの3人がかすかに描かれています。この修道士の習作はウフィツィ美術館の素描・版画部門に所蔵されています。ただし、ウフィツィ美術館ではこの人物をニコデモとは特定せず、単なる修道士としており、キリストの物語に修道士が登場するのは時代錯誤であるとし、この絵画が個人の瞑想用のものであると解釈しています。

前景に大きく描かれたキリストの突き出た膝は、前面短縮法で描かれており、絵画と鑑賞者の間の境界を打ち破る効果を生み出しています。

参考文献

ルチアーノ・ベルティ、アンナ・マリーア・ペトリオーリ・トファニ、カテリーナ・カネヴァ『ウフィツィ美術館』、みすず書房、1994年
Olivari, Mariolina. Giovanni Bellini. Florence: Scala. ISBN 888117099X

外部リンク

ウフィツィ美術館公式サイト、ジョヴァンニ・ベッリーニ『死せるキリストの哀悼』 (英語)
Catalog entry

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