段ヶ峰

段ヶ峰：播州高原に広がる、絶景とイヌワシの楽園

兵庫県朝来市生野町と宍粟市一宮町の境に位置する段ヶ峰（だるがみね/だんがみね）は、標高1103.41mのなだらかな山容が特徴的な山です。関西百名山、ふるさと兵庫50山に選定されており、西日本で数少ないイヌワシの生息地としても知られています。山頂には二等三角点が設置され、360度のパノラマ展望が楽しめることから、多くの登山愛好家を魅了しています。

生野高原のシンボル

段ヶ峰は、市川と円山川の谷の西側に連なる千町ヶ峰、砥峰高原、峰山高原、生野高原という4つの高原地帯の一つ、生野高原の最奥部に位置しています。生野高原は、生野銀山で有名な生野町の西側に広がり、フトウガ峰と合わせて峰山高原とほぼ同じ広さを誇ります。古くから「播州高原」と呼ばれ、その中心を担う段ヶ峰は、山頂に広がる草原と、周囲の山々を見渡せる絶景が魅力です。氷ノ山、暁晴山、笠形山、千ヶ峰はもちろん、南方の六甲山まで見渡せる眺望は、多くの登山者から高く評価されています。

多様な登山ルートと魅力的な自然

段ヶ峰への登山ルートは複数存在し、初心者向けのコースから、経験者向けのコースまで幅広く対応しています。

段ヶ峰縦走コース: 生野高原ゴルフ場を起点に、達磨ヶ峰、フトウガ峰を経由して段ヶ峰山頂を目指す約3時間のコース。比較的緩やかな勾配ですが、達磨ヶ峰までは急勾配の区間もあります。途中の展望ポイントからは、銀山湖や周囲の山々を一望できます。
杉谷コース: フトウガ峰山頂と町道を結ぶ最短コース。急勾配の杉林の中を歩くため、足元には注意が必要です。初心者でも安全に登れる一方で、スリリングな体験も提供します。

段ヶ峰の山域は、雪彦峰山県立自然公園に指定されており、四季折々の豊かな自然が魅力です。特に秋の紅葉は美しく、一面にドウダンツツジが咲く景色は圧巻です。標高が約1100mと、高すぎず低すぎないことも、初心者にとって親しみやすい点です。

イヌワシと風力発電計画

かつて段ヶ峰周辺では、大規模な風力発電所の建設が計画されていました。しかし、生息調査でイヌワシの飛来と巣の存在が確認され、風力発電施設による衝突の危険性や生態系への影響が懸念されました。イヌワシは食物連鎖の頂点に位置する種であり、その生息環境の保全は、周辺生態系の健全性を維持する上で非常に重要です。この計画は、環境保全の観点から見直され、最終的には中止となりました。

氷河時代の遺産：独特の地形

段ヶ峰の独特のなだらかな高原状の地形は、約170万年前の氷河期に形成されたものです。氷河期の繰り返しによる凍結と融解が岩石を割ることで、山頂付近の岩石が崩落し、低いところに堆積しました。この現象によってできた地形は、「化石周氷河斜面」と呼ばれ、段ヶ峰では、兵庫県内最大級の岩塊流も見られます。苔むした岩が幾重にも重なる様子は、長い時間をかけて形成された地形の歴史を物語っています。このような周氷河地形は、兵庫県内では段ヶ峰のほか、峰山高原、砥峰高原などに限られており、地質学的に貴重な存在です。1998年には「ひょうごの地形・地質・自然景観レッドデータ」においてAランクに指定されています。

段ヶ峰の名前の由来

かつては倉谷川の倉谷最高峰として「倉谷山」と呼ばれていましたが、地形図作成時の誤記から「だるがみね」という名が定着したとされています。

段ヶ峰は、美しい景観と豊かな自然、そして歴史的・地質学的にも貴重な存在として、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

もう一度検索