金子鷗亭

金子鷗亭について

金子鷗亭（かねこ おうてい、1906年5月9日 - 2001年11月5日）は、日本の著名な書家であり、近代詩文書の先駆者として知られています。本名は金子賢藏で、鷗亭は雅号です。彼の作品は、詩文書運動を確立し、そのスタイルや思想が多くの書家に影響を与えました。

生い立ちと経歴

金子鷗亭は、北海道松前郡小島村（現在の松前町）に生まれました。1921年、15歳で札幌鉄道教習所に入学し、同級生には著名な書家たちがいました。教習所在籍中に大塚鶴洞や川谷尚亭などから書を学び、1929年には函館師範学校を卒業。その直後に東京に上京し、比田井天来に師事しました。1933年、上田桑鳩が結成した書道芸術社に参加し、雑誌『書之研究』に「新調和体」論を発表、それを契機に近代詩文書運動を広める活動を始めました。

彼はまた六朝や北魏の楷書、木簡の研究にも取り組み、数々の受賞歴を持っています。1966年には日展文部大臣賞、1967年には日本芸術院賞、1990年には文化勲章を受章しました。文化勲章は書家としては1985年の西川寧以来の受章者です。

故郷の松前町には、1994年に彼の銅像が建立され、2008年には生誕100年を記念して「北鴎碑林」が設立され、彼の作品が石碑に記されています。この碑林は84作品を所蔵しており、国内最大級のものとされています。

近代詩文書運動

金子鷗亭は、比田井天来とその周囲の書家たちとともに新しい書表現についての議論を重ね、近代詩文書を提唱しました。この運動は、従来の漢詩や漢文を題材にするのではなく、日本語の詩文に書表現の焦点を置くものでした。『書之研究』において提示された「新調和体」論が、彼の考えの基盤となっています。

金子のこの独自の表現方法は、次第に広く受け入れられ、現在では毎日書道展に「近代詩文書」部門が設けられるほど、確固たる地位を築きました。

作品とその影響

金子は多くの詩を題材にした作品を出品しました。代表作には、小野十三郎の詩『断崖』、彼の代表作である『丘壑寄懐抱』、高村光太郎の詩『金秤』などがあります。また、井上靖の詩『交脚弥勒』を含む多くの作品が高く評価されています。

さらに、金子は書道関連の著書も多数残しています。著作には、『書之理論及指導法』や『金子鷗亭対談集 書とその周辺』などがあり、後進への指導にも尽力しました。

まとめ

2001年に95歳で亡くなるまで、金子鷗亭は日本の書道界に大きな影響を残しました。彼の業績は書道の発展に寄与し、近代詩文書の確立は多くの書家に新しい道を示しました。彼の思想や作品は、今なお多くの人々に愛され続けています。

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