比賣神社 (奈良市)

比賣神社（ひめがみしゃ）

比賣神社は、奈良県奈良市高畑町にひっそりと佇む神社です。その社殿は、比賣塚と呼ばれる小さな古墳の上に建てられており、古くから地元の人々に大切にされてきました。南都鏡神社の摂社として、静かに歴史を刻んでいます。

歴史

比賣塚は、古くから「高貴の姫君の墓」として語り継がれてきました。特に有力な説として、『日本書紀』に記された天武天皇の皇女である十市皇女（とおちのひめみこ）と、氷上娘（ひかみのいらつめ）の墓ではないかと考えられています。記録によると、十市皇女は天武天皇6年（678年）に、氷上娘は天武天皇10年（682年）に、いずれも「赤穂」の地に葬られたとされています。比賣神社の近くには赤穂神社もあり、その関連性が偲ばれます。

20世紀に入り、比賣塚は国有地となり奈良財務局の管理下に置かれました。しかし、地元の有志たちの熱心な働きかけにより、奈良財務局から払い下げを受け、神社を造営する運びとなりました。比賣塚の現形である9坪を新薬師寺に寄進し、神殿と祭祀は南都鏡神社の摂社として委任されることになりました。

1980年（昭和55年）の夏には、新薬師寺と南都鏡神社の協力のもと地鎮祭が執り行われ、同年末には上棟祭が行われました。そして、1981年（昭和56年）5月10日、十市皇女の命日である4月7日を新暦に換算した日に、鎮座奉祝祭が盛大に開催され、十市皇女を祀る比賣神社が誕生したのです。

祭神

比賣神社の主祭神は、悲劇の皇女として知られる十市皇女です。その脇座には、市寸嶋比売命（いちきしまひめのみこと）が祀られています。

境内

境内には、高さ約2.5m、幅約2mほどの本殿が建てられています。本殿の正面には朱塗りの門があり、通常は閉ざされています。参拝者は、門前から鈴に繋がる紐を引いて参拝します。

本殿の左側には、男女が寄り添う姿が彫られた高さ約1.5mの神像石があります。その隣には「神像石（かむかたいし）」と呼ばれる石碑があり、大友皇子・十市皇女から淡海三船までの4代とそれぞれの妃が祀られています。

また、本殿の脇には絵馬掛けがあり、良縁を願う人々の絵馬が数多く掛けられています。絵馬掛けの前には小さな石が置かれ、万葉集の歌「河の上の斎つ岩群に草むさず　常にもがもな常処女にて」が刻まれています。

交通アクセス

近鉄奈良駅から奈良交通バス「中循環」で「破石町」下車、東へ徒歩10分
JR奈良駅から奈良交通バス「市内循環」又は「中循環」で「破石町」下車、東へ徒歩10分

参考文献

比賣神社 由緒

関連項目

十市皇女
赤穂神社
南都鏡神社

比賣神社は、静かで心落ち着く空間であり、歴史好きやロマンを求める人々にとって、訪れる価値のある場所です。ぜひ一度、足を運んでみてください。

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