赤穂神社

赤穂神社（あかぼじんじゃ）

赤穂神社は、奈良県奈良市高畑町に位置する神社です。古くは式内社として名を連ね、『延喜式』にもその名が記されています。二月堂のお水取りで読み上げられる『神名帳』には「赤穂明神」として登場します。

歴史

『日本書紀』には、天武天皇6年（678年）に十市皇女が、天武天皇10年（682年）に氷上娘が「赤穂」の地に葬られたという記述があり、この「赤穂」こそが現在の赤穂神社周辺であるという説が有力です。飛鳥時代より藤原氏の氏神として崇敬され、平城遷都に伴いこの地に遷座したと伝えられています。神社の名前の由来は、熟した稲穂を神籬にかけ、「赤丹穂に聞食し給へ」と申したことによるとされています。

かつては数百坪ほどの広大な社地を有し、明井町（閼伽井町）の通りには大鳥居が、境内には桜の名所となる神領がありました。しかし、時を経て田地となり、その一帯は「桜田」と呼ばれるようになりました。明治維新の際には荒廃が進み、200戸近い氏子や禰宜の多くが離散し、築地塀のみが残るという状況でした。堀辰雄をはじめとする文化人がその様子を嘆き、詩文を遺しています。その後、地元の有志によって復興が進められ、天満宮と弁才天社を合祀し、赤穂神社の左に並べて祀る現在の形となりました。1930年（昭和5年）には、近隣の新薬師寺のそばにある鏡神社の別社となり、現在に至ります。

祭神

主祭神は天児屋根命です。相殿には天満宮（菅原道真公）と弁才天が祀られています。「高貴の姫君を祀る」という伝承から、女性守護の霊験あらたかであると信じられています。

伝説

聖武天皇が眼病を患った際、新薬師寺に祈願したところ、「赤穂の神に祈り、社の西南にある清浄な水で目を洗うべし」という夢のお告げがありました。その通りにしたところ、たちまち病が癒えたと伝えられています。この故事にちなみ、その清水は「明井（あけい）」と名付けられ、現在では「閼伽井（あかい）」と呼ばれています。

アクセス

近鉄奈良駅から奈良交通バス「中循環」に乗車、「破石町」バス停下車後、東へ徒歩約5分。
JR奈良駅から奈良交通バス「市内循環」または「中循環」に乗車、「破石町」バス停下車後、東へ徒歩約5分。

参考文献

奈良県史編集委員会 編『奈良県史 5 神社』名著出版、1989年。

関連項目

十市皇女

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