毛利氏の伊予出兵

毛利氏の伊予出兵とは

毛利氏の伊予出兵は、1567年（永禄10年）から翌年にかけて、安芸国の戦国大名・毛利氏が伊予国へ行った軍事行動です。この出兵は、伊予国内の勢力争いに毛利氏が介入しただけでなく、当時勢力を拡大していた大友氏との対立も背景にありました。

出兵の背景

当時の伊予国は、河野氏が中心となっていましたが、その支配力は全域に及んでいませんでした。宇和郡の西園寺氏や喜多郡の宇都宮氏など、各地の国人勢力が離合集散を繰り返していました。河野氏と西園寺氏が手を組む一方で、宇都宮氏は土佐一条氏と連携して勢力を競っていました。

この勢力争いの裏には、安芸国を中心に勢力を拡大していた毛利氏と、豊後国を中心に勢力を拡大していた大友氏の対立がありました。河野氏は毛利氏と姻戚関係にあり、瀬戸内海の支配権を巡って村上水軍とも協力関係にありました。一方、大友氏は土佐一条氏と姻戚関係にあり、伊予国への影響力を強めようとしていました。

河野氏当主の河野通宣は病に倒れており、家臣の村上通康や平岡房実らが政務を代行していました。このような状況の中、土佐一条氏が南伊予へ侵攻し、宇都宮氏が河野氏に敵対する動きを見せました。これにより、伊予国内の情勢はますます不安定になっていきました。

出兵の経過

1567年、土佐一条氏が南伊予へ侵攻を始めると、宇都宮氏もこれに呼応して河野氏に敵対しました。河野氏家臣の村上通康と平岡房実が出陣し、宇都宮氏の諸城を攻略しましたが、一条兼定が軍勢を北上させ、宇都宮氏を支援しました。これにより、河野軍と一条軍の間で小競り合いが起こりました。

危機感を抱いた河野通宣と村上通康は、毛利氏に救援を依頼しました。毛利元就は過去に村上通康の支援を受けた恩を返すため、小早川隆景に伊予出兵を命じました。しかし、村上通康は援軍到着前に急死してしまいます。小早川隆景は、村上通康の死後も伊予出兵を決定し、村上吉継を案内役として伊予国へと出陣しました。

1568年1月、土佐一条氏は西園寺氏を従属させ、鳥坂峠の東にある高島に進出しました。河野軍は高島を攻撃しましたが撃退され、この頃には小早川隆景の指示によって、周防国や因島村上水軍も伊予国へ展開していました。

また、九州から乃美宗勝が合流し、一条軍との対決を模索していました。河野軍は村上吉継が主力となり鳥坂峠に陣城を築き、一条軍は鳥坂城を攻撃しましたが、村上吉継の奮戦により撃退されました。その後、小早川隆景が伊予国に上陸し、宇都宮氏を救援するため進軍してきた一条兼定と対峙しました。

毛利軍の援軍が到着すると、戦況は一気に毛利軍有利に展開しました。毛利軍は宇都宮氏の居城であった大洲周辺を制圧し、一条・宇都宮連合軍を破りました。

その後、小早川隆景は、大友氏との戦いのために北九州へと進出。毛利軍主力が引き上げた後も、土佐一条氏は伊予国に出兵を続けていましたが、村上吉継が下須戒城を落とすなど、徐々に戦況は毛利・河野側に有利になっていきました。最終的に宇都宮豊綱は降伏し、大洲城は開城。豊綱は毛利氏の捕虜となりました。

出兵の意義

毛利氏の伊予出兵は、伊予国内の勢力争いにとどまらず、毛利氏と大友氏の対立を背景としたものでした。大友氏は、毛利氏の九州侵攻を遅らせるため、伊予国に毛利軍を釘付けにしようとしました。毛利氏は九州と四国の二方面作戦を余儀なくされましたが、小早川氏にとっては伊予国に勢力を拡大する絶好の機会となりました。また、来島村上水軍をはじめとする伊予国の海賊衆を支配下に置いたことは大きな成果でした。

一方、河野氏は伊予国内での独立支配を失い、毛利氏に従属する存在となりました。土佐一条氏は、この戦いで大きな被害を受け、国力を大きく落としました。また、傘下であった長宗我部元親が自立の動きを見せ始める要因の一つにもなりました。

この後、毛利氏と大友氏は北九州の覇権を争い、激戦を繰り広げることになります。

まとめ

毛利氏の伊予出兵は、戦国時代の西日本における勢力図を大きく変える出来事でした。この出兵をきっかけに、毛利氏は伊予国への影響力を強め、四国での勢力拡大の足がかりとしました。また、大友氏との対立が激化し、後の九州での戦いへと繋がっていきました。

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