一条兼定

一条兼定の生涯

一条兼定は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した公家であり、土佐一条氏の第4代当主です。土佐一条氏は、一条房基を祖とする一族で、兼定は房基の嫡男として天文12年（1543年）に土佐国幡多郡中村で生まれました。幼くして父を亡くし、関白であった大叔父の一条房通の猶子として上洛し、元服後に「兼」の字を与えられ兼定と名乗りました。後に土佐国に下向し、大名としての活動を開始します。

土佐一条氏の当主として

兼定は、伊予国の宇都宮豊綱の娘と結婚しましたが、後に離縁し、大友義鎮の娘を娶り大友氏と結びました。伊予国の覇権を巡り宇都宮豊綱を支援して伊予へ進出しますが、毛利氏の援軍を受けた河野氏に敗れます。この頃から、土佐国内で長宗我部元親が台頭し、妹婿である安芸国虎と連携して討伐を試みますが、国虎が元親に討たれてしまいます。その後、長宗我部氏による領土侵食が始まり、さらに御一門の土居宗珊一族を殺害したことで家臣の信望を失い、羽生監物、為松若狭守、安並和泉守ら三家老の合議によって隠居を強制されることになります。

隠居、そしてキリスト教への入信

隠居後、兼定は九州へ逃れ大友氏を頼ります。その後、土佐国奪還のため、宇都宮氏旧臣である梶谷景則のもとで兵を募ります。しかし、兼定の追放を知り憤慨した家臣らが挙兵しますが、長宗我部氏の侵攻を招き、中村を占領される結果となりました。失意の中、宣教師ジョアン・カブラルから洗礼を受け、キリスト教に入信し、ドン・パウロという洗礼名を受けます。再興を試みて大友氏の助けを得て土佐国に侵攻するも、四万十川の戦いで大敗を喫し、土佐一条氏は滅亡しました。

晩年と死

その後、兼定は宇和海の戸島に隠棲しますが、旧臣に暗殺されかけ重傷を負うなど、苦難の生活を送りました。しかし、熱心な信仰生活を送り、その姿は訪れた宣教師ヴァリニャーノを感嘆させたといいます。天正13年（1585年）、熱病により戸島で亡くなりました。嫡男の内政も、兼定の死の翌日に亡くなっています。

人物像と評価

兼定は、土佐一条氏を滅亡させた人物として軍記物などでは暗愚な人物として描かれています。しかし、近年ではその評価は見直されており、旧領回復への強い意志や、キリスト教への信仰心の深さなどが注目されています。また、兼定の隠居は、土佐一条家の戦国大名化を嫌う京都の一条家当主である一条内基の意向が強く影響していたという説が有力です。兼定の生涯は、悲劇的でありながらも、その信仰心や旧領回復への執念など、多くの興味深い側面を持つ人物として捉えられています。

平田村には、兼定が美男子で仁徳の将であったという伝説も残っており、現在でもヤーサイ祭として供養されています。また、中脇聖の研究では、兼定自身が直接的な在地支配に関する文書を発給しておらず、土佐一条氏は戦国大名とはいえないと指摘されています。兼定の墓所は、晩年を過ごした戸島の龍集寺にあり、島民からは「一条様」「宮様」と呼ばれ親しまれていたそうです。

官歴

天文20年（1551年）11月28日：正五位下、禁色、昇殿、左近衛少将。
天文20年（1551年）12月28日：元服、従四位上
天文21年（1552年）7月27日：従三位
元亀4年（1573年）6月7日：左近衛中将
元亀4年（1573年）6月19日：権中納言
元亀4年（1573年）9月16日：出家

系譜

父：一条房基
母：大友義鑑の娘
養父：一条房通
正室：宇都宮豊綱の娘
継室：ジュスタ（大友義鎮の長女）
側室：おまん、おゆき
子：一条内政、按察使局、右衛門太郎、正太郎、マダレイナ
養子：中山田泰吉室

偏諱を与えた人物

津野定勝

登場作品

小説: 大原富枝『於雪 - 土佐一條家の崩壊』、司馬遼太郎『夏草の賦』
* ゲーム: 信長の野望シリーズ、戦極姫7〜戦雲つらぬく紅蓮の遺志〜

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