毛鐘尻山

北海道の北東部、紋別郡雄武町に位置する毛鐘尻山（けがねしりやま）は、標高916.4メートルを測る山です。山頂には測量の基準となる一等三角点「毛鐘尻」が設置されています。

北見山地の北部主稜線からわずかに雄武町側へ外れた位置にあり、幌内越峠を挟んで南西にそびえるピヤシリ山と対峙しています。周囲は豊かな森林に覆われています。

毛鐘尻山という名は、かつてアイヌの人々が呼んだ「ケカネシㇼ」に由来するとされます。これはアイヌ語の「key-ka-ne-sir」（頭・上・にある・山）が変化したもので、「頭部が高い山」といった地形的な特徴を意味すると考えられています。

この山には整備された一般的な登山道が存在しません。そのため、登頂には特別な知識や技術が必要となり、容易に立ち入ることのできる山ではありません。自然度の高い環境が保たれている反面、登山には相応の準備が求められます。

無雪期のアプローチの一つとして、上幌内地区から始まるルートがあります。幌内川の支流であるパンケオロピリカイ川に沿って伸びる班景林道を途中まで進み、車両を置いてから徒歩で林道を奥へ向かいます。その後、毛鐘尻山の山体の西側に広がる沢に入り、沢を遡る沢登りや、山頂へと続く密生した藪を漕ぎ分ける藪漕ぎを経て山頂を目指すのが一般的な手法です。このルートでは、沢登りや藪漕ぎといった専門的な技術と装備が不可欠となります。

積雪期や残雪期の主なルートは、無雪期とは異なります。道道137号線から分岐し、イソサム川の左岸沿いに延びる林道がアプローチの起点となります。林道を登り進み、適当な場所で林道を離れて尾根に取り付きます。そこから、標高820メートルほどのシャマッケヌプリへ向かって直登する形をとり、シャマッケヌプリの山頂に到達した後は、そのまま毛鐘尻山へと続く稜線上をたどって目的の山頂を目指します。積雪により藪が覆い隠され比較的歩きやすい区間もありますが、雪質や積雪量によっては、ワカンやスノーシュー、ピッケルなどが必要となり、雪崩や滑落に対する注意も必要です。

毛鐘尻山は登山道がなく、一般的なハイキングとは異なる挑戦的な山です。自然そのままの環境が残されていますが、登頂には沢登り、藪漕ぎ、雪山歩行など、特定の技術と経験、そして十分な計画と安全への最大限の配慮が求められます。

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