民兵団 (フランス)

フランス民兵団：ヴィシー政権下の影

第二次世界大戦中、ナチス・ドイツ占領下のフランスにおいて、ヴィシー政権の庇護下で活動した親ナチス組織「フランス民兵団（Milice française）」は、その残虐な行為によってフランスの歴史に暗い影を落とした存在です。1943年1月30日に結成されたこの民兵組織は、右翼団体「アクション・フランセーズ」出身者や、対独協力的な労働者階級の人々を中心に構成されていました。

名目上はヴィシー政権の首相ピエール・ラヴァルが統括していましたが、実質的な指揮権は、アクション・フランセーズ出身のジョゼフ・ダルナンが握っていました。公式の治安組織とは独立しており、法の制約を受けない特異な組織として活動しました。

民兵団の主な任務は、レジスタンス運動の掃討と国内治安維持、そしてユダヤ人への迫害でした。レジスタンスへの弾圧は徹底しており、拷問や虐殺といった残虐行為も日常的に行われました。1944年6月、ヴィシー政権の情報担当国務長官フィリップ・アンリオがレジスタンスによって暗殺されると、民兵団は報復として元内相ジョルジュ・マンデルを始めとするレジスタンス指導者らを殺害しました。その残忍な行為は、ヴィシー政権の首脳であるフィリップ・ペタンですらダルナンに自制を促すほどでした。

民兵団の活動は、ユダヤ人に対する強制収容と大量虐殺にも及びました。彼らは、ナチスの政策に協力し、ユダヤ人を収容所に送るだけでなく、多くのユダヤ人を殺害しました。その数は正確には把握されていませんが、膨大な数にのぼると推測されています。

連合軍のノルマンディー上陸作戦とパリの解放によって、フランスの解放が進むと、民兵団は瓦解しました。一部のメンバーはドイツへ逃亡し、中にはSS「シャルルマーニュ」師団に参加した者もいました。しかし、多くはレジスタンスや一般市民からの報復の対象となり、ダルナンをはじめとする幹部は裁判にかけられ、多くの隊員がリンチにあいました。

戦後、フランス民兵団は徹底的に糾弾されました。1994年には、民兵団の指揮官だったポール・トゥヴィエが戦時中の虐殺行為によって有罪判決を受けるなど、現在に至るまで、彼らの戦争犯罪に対する追及は続いています。「ミリス」という単語は、フランス語で民兵団を意味するMiliceの略語ですが、現在でも侮辱的な意味合いで用いられることが多く、その行為の重さを物語っています。

フランス民兵団の活動は、ヴィシー政権下のフランスにおける協力と抵抗、そして戦争犯罪の複雑な歴史を象徴するものです。彼らの残虐行為は、二度と繰り返してはならない過去の過ちとして、後世に伝え続けられるべきでしょう。 彼らの存在は、戦争の悲惨さと、人間の残酷さを改めて私たちに突きつけます。 現代においても、歴史を正しく理解し、このような悲劇を繰り返さないための努力が不可欠です。

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