民航空運公司10便墜落事故

民航空運公司010便墜落事故の概要

1968年2月16日、台湾の航空会社であった民航空運公司の010便（ボーイング727-92C、機体記号B-1018）が、香港の啓徳空港から台北松山空港へ向かう途中で墜落しました。この事故は、航空会社の運航担当役員が、商業路線でのフライトライセンスを持たないまま、違法に操縦していたことが原因で発生しました。

事故発生時の状況

010便は、計器着陸装置（ILS）に誘導され、計器進入による着陸態勢に入っていました。しかし、操縦していた運航担当役員が自機の位置を誤って把握し、過度に早いタイミングで降下を開始。この致命的な操縦ミスにより、機体は高度を著しく下げてしまいました。正規の機長であったスチュアート・E・デューは、異常に低い高度に気づき、直ちにゴーアラウンドを試みましたが、時すでに遅く、機体は地表に接触。その後、200メートルほど激しくロールし、一旦は浮上したものの、空港の手前で樹木や小屋に衝突しながら、台北県林口郷に墜落、炎上しました。

救助活動と犠牲者

松山空港の消防隊と、現地に駐留していた在台米軍が直ちに救助活動を開始しましたが、この事故により、乗員11名、乗客52名のうち、乗員3名と乗客18名の合わせて21名が犠牲となりました。ボイスレコーダーには、墜落直前の機長の「Go to hell!」という叫び声が記録されており、その緊迫した状況が伺えます。

事故調査の結果

事故調査を担当した台湾民航局の1968年3月4日の報告書では、以下の点が指摘されています。

機長が操縦桿を引いた時、機体は直ちに加速しており、機体に故障は認められなかった。
事故当時の天候は良好であった。
事故前後の2時間に6機が松山空港に着陸しているが、いずれも計器進入で問題なく着陸している。
管制塔との交信は問題なく行われていた。

これらの調査結果から、事故は操縦ミスが原因であると結論付けられました。

事故の影響

事故機は、アメリカのサザン・エア・トランスポートからの借用機で、民航空運公司が保有する唯一のジェット旅客機であり、また唯一の国際線就航機でした。この機体を失ったことで、民航空運公司は運行路線の縮小を余儀なくされ、国際線は再開されることはありませんでした。結果として、1975年には会社は清算されることとなりました。この事故は、当時の台湾の航空業界に大きな衝撃を与え、安全運航の重要性を改めて認識させる出来事となりました。

参考文献

柳田邦男『航空事故』中央公論社（現中央公論新社） 1975年
aviation-safety.net（英語）

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