水上市場

水上市場：水上交易の魅力

水上市場は、河川や湖沼などの水域で、船を拠点に商品取引が行われる市場の総称です。英語ではFloating Marketと呼ばれ、ベトナム語ではChợ nổi、タイ語ではตลาดน้ำと表記されます。水運が発達した地域特有の文化であり、東南アジアを中心に独自の発展を遂げてきました。

水上市場の概要

水上市場は、単なる商業の場としてだけでなく、地域住民の生活に深く根ざした存在です。特にベトナム、タイ、カンボジア、インドネシアなどの国々では、メコン川、チャオプラヤー川、トンレサップ湖といった大河や湖沼、そしてそれらに繋がる無数の運河が重要な交通路として機能してきました。自動車などの陸上交通が十分に発達していなかった時代には、農産物や水産物などの物資輸送は水運に大きく依存しており、その結果、船同士が直接取引を行う水上市場が自然発生的に発達しました。

現代では、水上市場は観光地としての側面も強くなっています。伝統的な市場の風景を体験できるだけでなく、地元の食材を使った料理を味わったり、手工芸品を購入したりすることもできます。観光客にとっては、その土地の文化や人々の暮らしに触れることができる貴重な機会となっています。

各地の水上市場

ベトナム

ベトナムでは、メコンデルタ地方に多くの水上市場が存在します。代表的なものとしては、カントー市のカイラン水上市場やフォンディエン水上市場、ティエンザン省のカイベー水上市場などが挙げられます。これらの市場では、早朝から取引が始まり、昼前にはほとんどの店が店じまいします。取引の中心は果物や農作物ですが、コーヒーや軽食、雑貨などを扱う店も見られます。卸売業者は、販売する商品を旗竿に掲げて目印にすることが一般的です。

タイ王国

タイでは、ラーチャブリー県のダムヌーンサドゥワック水上市場や、バンコクのタリンチャン水上市場が有名です。これらの市場は、文化保護と観光客誘致を目的に整備されました。また、アムパワー水上マーケットは、船上での取引というよりも、川沿いに並ぶ店で買い物をするスタイルが中心で、夜遅くまで賑わっています。

インドネシア

インドネシアでは、カリマンタン島バンジャルマシンの水上市場が知られています。

カンボジア

カンボジアでは、トンレサップ湖に水上生活者が多く暮らしており、船上での商取引も彼らの生活の一部となっています。

水上市場は、その土地の歴史や文化、人々の生活様式を反映した、生きた博物館のような場所です。機会があれば、ぜひ訪れて、その活気と魅力を体感してみてください。

*参考書籍

• - 『地球の歩き方 D21 ベトナム '12-'13 』 ダイアモンド・ビッグ社 2010年 ISBN 978-4-478-04304-2
• - 『地球の歩き方 D17 タイ '12-'13 』 ダイアモンド・ビッグ社 2010年 ISBN 978-4-478-04230-4

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