水島の変

水島の変（みずしまのへん）

水島の変は、南北朝時代末期の1375年9月22日に発生した事件で、九州探題の今川了俊が筑前守護の少弐冬資を熊本県菊池市七城町の水島で暗殺したことに端を発します。この事件は、九州における権力関係を大きく揺り動かす契機となりました。

背景

九州探題として1371年に派遣された今川了俊は、彼の卓越した戦略によって南朝の懐良親王や菊池武光が拠点としていた大宰府を陥落させ、さらには筑後高良山の支配を手中に収めました。これにより、了俊は南朝の勢力を押し下げ、北朝方の少弐氏との間に緊張が生まれました。北朝を支持する少弐氏は、了俊による筑前支配の拡大を恐れ、次第に彼に対して非協力的な態度をとるようになりました。

事件の発端

1375年に入り、了俊はついに肥後への本格的な攻撃を開始し、7月12日に水島に軍を進めました。この際に、九州の有力守護である島津氏久、豊後の大友親世、そして少弐冬資を召集しました。大友親世と島津氏久は次々と水島に到着しましたが、冬資は出陣を渋りました。冬資が最終的に参陣することを決めても、了俊は彼を自陣に招待し、歓迎の宴を催しました。

暗殺の実行

その宴の最中、了俊の命を受けた山内某が冬資を襲撃し、今川仲秋がその場で冬資を斬り殺しました。この暗殺事件は、少弐氏と了俊の関係を完全に断絶させる結果となり、島津氏久は激怒し帰国を決意しました。一方、大友親世は中立的な姿勢に転じました。

この一連の事件を受け、菊池軍が力を増し、8月29日には了俊が派遣した長井貞広や宇都宮経景が菊池軍に対して大敗を喫しました。9月8日には水島からの撤退を余儀なくされ、了俊は筑前守護の職を兼務することを宣言し、冬資の甥である貞頼に守護職を譲ることとなりましたが、筑前の実権は依然として了俊の手に残りました。

影響と結果

水島の変によって、島津氏や大友氏との連携が崩れ、九州の南朝側が一斉に蜂起し、九州の平定は難しくなりました。しかし、了俊は北九州での権力基盤を固め、引き続き積極的な九州経営を続けました。

ところが、この成功にもかかわらず、了俊は高麗からの外交交渉を独自に行うなど、室町幕府の方針と対立する事態を招きました。その結果、彼の立場は弱体化し、後の失脚につながる重要な要因となりました。

参考文献

• - 川添昭二『水島の変』（国史大辞典 13）
• - 佐伯弘次『水島の変』（日本史大事典 6）
• - 川添昭二『今川了俊』人物叢書

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