高良山

高良山

高良山は、福岡県久留米市に位置する標高312.3mの山で、古くから信仰の対象として崇められてきました。高牟礼山、不濡山、青山山、梶山、琴弾山などとも呼ばれ、地域の人々に親しまれています。

地理と構造

高良山は耳納山地の西端に位置し、主峰の毘沙門岳を中心に、本宮山、鷲ノ尾山、勢至堂山、虚空蔵山、吉見岳の5つの峰から構成されています。地質は、変成岩層の上に角礫岩、さらにその上にローム層が重なっています。山中には、高良山神籠石や、麓には多くの末社・末寺、古墳群などの遺跡が点在しています。

登山道は、御手洗池から社殿へ続く表参道、宗崎から稲荷社を経由して表参道に合流する道、山川町追分を起点とする裏参道、御手洗池から北谷沿いに進む道などがあります。また、1933年には自動車道が開通、1969年には耳納スカイラインが全線開通し、車でのアクセスも容易になりました。

山頂付近は久留米森林つつじ公園として整備され、東側には生活環境保全林が広がっています。山中にある「高良山のモウソウキンメイチク林」は国の天然記念物、高良大社のクスノキの大樹は福岡県指定天然記念物に指定されており、一帯は鳥獣保護区としてキジの放鳥なども行われています。

歴史

高良山の創建は天武2年（673年）頃とされ、弘仁元年（810年）に隆慶上人が講堂を改築したことで、事実上の開祖となりました。隆慶は丹波氏の出身で、その後、第48世玄逸まで丹波氏による管理が続きました。天暦3年（949年）には、比叡山に倣って座主制度が導入されました。

中世には、高良山を中心とした寺社勢力が強大となり、政治的な影響力を持つようになりました。建武2年（1335年）には、衆徒が麓の荘園で乱暴を働いた記録が残っています。南北朝時代には、一帯が戦場となり、懐良親王や今川氏などが滞陣しました。

戦国時代には、大友氏や龍造寺氏、立花道雪や高橋紹運などが高良山を拠点とした記録があります。近世に入ると、神仏習合の下、座主を中心に宗教、学問、芸術の拠点として、領主の保護を受けました。

天正15年（1585年）、豊臣秀吉が九州征伐の際に高良山近くの吉見岳城に入城しました。この際、座主の良寛（麟圭とも）が秀吉への対応を誤ったため、所領を没収された後、改めて1000石を与えられました。その後、座主麟圭は、新たに久留米城主となった小早川秀包と対立し、軍事的な衝突を繰り返しましたが、最終的には小早川秀包の策略により殺害されました。この事件は、高良山が独立した宗教勢力から封建制度に組み込まれる転換点となりました。

麟圭の死後、その子である尊能が座主となりましたが、その後、血統が絶え、第49世からは日光山輪王寺座主から派遣された座主が任命されるようになりました。

江戸時代には、有馬忠頼が石造大鳥居を、有馬則維が愛宕社を建立するなど、整備が進められました。

明治時代の神仏分離令により、座主が廃止され、ほとんどの寺院がなくなりました。五百羅漢の石像は谷に投げ捨てられるなど、大きな変化がありました。

戦後には、陸上自衛隊幹部候補生学校の伝統行事として高良山登山走が行われています。

建造物

高良山には、山頂に高良山奥院、中腹に高良大社があり、南北の谷を囲むように高良山神籠石が残されています。山中や山麓には、祇園山古墳、礫山古墳、高隆寺跡、御井寺跡、座主の墓地、伊勢天照御祖神社、高牟礼権現、宮地嶽神社、桃青霊神社、愛宕社、琴平神社、厳島神社などが点在しています。

また、山頂付近には、高良大菩薩が経典・仏具を納め、天竺無熱池の水を流したという伝説があり、戒壇が設けられ、高良山僧の出家灌頂が行われたとされています。

中世には、高良大社の背後に住厭城、山頂の毘沙門岳城をはじめ、吉見岳城や東光寺城などが築かれ、山全体が陣所となっていました。

文化財

高良山には、数々の文化財が残されています。高良山神籠石は古代の山城の遺構であり、石造大鳥居は国の重要文化財に指定されています。また、高良山のモウソウキンメイチク林は国の天然記念物、高良大社のクスノキの大樹は福岡県指定天然記念物となっています。

参考文献

角川日本地名大辞典編纂委員会『角川日本地名大辞典（40.福岡県）』、角川書店、1988年
日本歴史地名大系 (オンライン版)

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