水無川 (神奈川県)

水無川（みずなしがわ）

水無川は神奈川県秦野市を流れる金目川水系の二級河川で、特に戸川堰堤から下流約7.5kmが二級河川として指定されています。川は丹沢山系の塔ノ岳に源を持ち、南流し、秦野盆地で流れを東に変え、最終的に室川と合流します。

地理的特徴

水無川の流路は、過去において南方の中井町に向かって流れていたとされ、地殻変動により現在のルートに変わったと考えられています。この変化は約4万年前の渋沢断層の活動に起因しています。水無川はその名の通り、平時には伏流しており、ほとんど水が見えない状況が続いていました。しかし、豪雨の際には多くの利用された土石を伴って氾濫し、周囲の土地に水害を引き起こすことがありました。

治水対策

明治時代には、河川の流れを安定させるために幾度も治水工事が行われました。1908年には堤防が建設され、後に大野式と呼ばれる工法が採用されました。1940年代には多くの堰堤が建設され、流域での農業の発展を促しました。特に戸川堰堤は1941年に完成し、現在の形状に改善されました。これにより約100haの土地が利用可能になり、農作物の生産が増大しました。

1993年からの土砂防止事業後、水無川の流路は安定し、今では比較的氾濫の危険が低い河川となっているのです。

水質と環境改善

水無川の水質問題は1970年代に深刻化しました。特に下流地域では家庭排水が原因で大きな汚染が生じていました。しかし、1974年に秦野市の下水道整備が開始され、下水処理施設も稼働し始めました。その結果、水質は改善され、2022年度には水質基準を上回るまでになりました。

上流部の河川敷は市民に親しまれており、「みずなし川緑地」として整備され、地域の憩いの場となっています。県立秦野戸川公園も整備され、観光客や登山者が訪れるスポットとなっています。

地域との結びつき

水無川には弘法大師にまつわる伝説があり、川が干上がった由来を語り継いでいます。加えて、かつて水無川周辺で採石されていた戸川砥（とかわと）は、秦野地方の特産品として知られ、古い文献にもその存在が記されています。

まとめ

水無川は地元の歴史、文化、環境との密接な関係を持つ水系です。治水活動を通じて発展してきたその姿は、地域住民にとって重要な資源であるだけでなく、自然との共生を考える上でも多くの示唆を与えてくれます。今後もその保全と活用が期待される存在です。

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