水痘・帯状疱疹ウイルス

水痘・帯状疱疹ウイルス：解説

水痘・帯状疱疹ウイルス（VZV）は、ヘルペスウイルス科に分類されるDNAウイルスの一種です。このウイルスは、私たちがよく知る水痘と、大人になってから発症する帯状疱疹の両方の原因となります。

ウイルスの性質と分類

VZVは、学名をHuman herpesvirus 3 (HHV-3) と呼びます。ヘルペスウイルス科の中でもα-ヘルペスウイルス亜科に属しており、単純ヘルペスウイルス1型（口唇ヘルペス）や2型（性器ヘルペス）と遺伝的な類似性が高いことが知られています。

臨床症状：水痘と帯状疱疹

VZVへの初感染は、一般的に水痘として現れます。特徴的な赤い発疹が全身に広がり、強い痒みを伴います。ほとんどの場合、自然治癒しますが、重症化することもあります。水痘から回復した後も、ウイルスは体内に潜伏感染します。具体的には、神経節という神経細胞の集まりに潜伏し、長期間にわたって無症状のまま存在します。

しかし、加齢やストレス、免疫力の低下などによってウイルスが再び活性化すると、帯状疱疹を発症します。帯状疱疹は、体の片側に沿って帯状に発疹が現れるのが特徴で、激しい痛みを伴うことがあります。この痛みは、発疹が治まった後も続く場合があり、帯状疱疹後神経痛と呼ばれます。

診断方法

水痘と帯状疱疹の診断は、主に皮膚に現れる特徴的な発疹によって行われます。典型的な症状を示す場合、特別な検査は必要ありません。しかし、症状が atypical な場合や、他の疾患との鑑別が必要な場合は、血液検査など追加の検査を行うこともあります。

治療法

VZVに対する治療には、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルなどの抗ウイルス薬が有効です。これらの薬剤は、ウイルス増殖を抑制し、症状の改善を促します。水痘と帯状疱疹のどちらの場合でも、同じ薬剤が同じ用量で使用されます。

また、重症化しやすい白血病などの患者には、水痘ワクチンが生ワクチンとして投与されることもあります。

予防：ワクチン接種

水痘と帯状疱疹の予防には、ワクチン接種が有効です。

水痘ワクチン

日本では、2014年から水痘ワクチンが定期接種となっています。1歳児から、一定期間を空けて2回接種することで、水痘の発症リスクを大幅に減らすことができます。

帯状疱疹ワクチン

帯状疱疹の予防には、帯状疱疹ワクチンが用いられます。アメリカ合衆国では、2006年から60歳以上の人を対象に帯状疱疹ワクチン「Zostavax」の接種が推奨され、2011年には対象年齢が50歳以上に拡大されました。このワクチンは、帯状疱疹の発症リスクを減らすだけでなく、帯状疱疹後神経痛のリスクも軽減する効果が期待できます。ただし、ワクチンの効果は時間とともに減少するため、定期的な接種が必要となる可能性があります。

日本では、2016年から50歳以上の方を対象に帯状疱疹ワクチンの接種が認められています。現在、日本で「Zostavax」は認可されていませんが、小児用の水痘生ワクチンが転用されたり、2020年1月からは帯状疱疹サブユニットワクチン「シングリックス(Shingrix)」が使用できるようになっています。

まとめ

水痘・帯状疱疹ウイルスは、水痘と帯状疱疹という2つの異なる疾患を引き起こすウイルスです。抗ウイルス薬やワクチンによって効果的な予防と治療が可能であり、特に高齢者や免疫不全の患者は、ワクチン接種による予防が重要となります。

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