永定河

永定河（えいていが）

永定河は、中華人民共和国を流れる重要な河川であり、華北地方の大河である海河の主要な支流の一つです。満州語ではenteheme toktoho biraと呼ばれます。

歴史

永定河は、その歴史の中でいくつかの異なる名前で呼ばれてきました。古くは㶟水（るいすい）と呼ばれ、隋代には桑乾河、金代には盧溝と呼ばれていました。北京市郊外に位置する有名な盧溝橋は、この川に架かっており、橋の名前は金代の川の呼び名に由来しています。

また、かつては洪水のたびに流路が大きく変わったため、無定河（むていがわ）とも呼ばれていました。この不安定な流れを鎮め、安定した流れとなるようにとの願いを込めて、永定河と改名されたという説があります。

地理

海河水系の七大支流の一つである永定河は、河北省においても最大級の川です。流域面積は47,016平方kmに及び、そのうち山地が45,063平方km、平野部が1,953平方kmを占めています。流域は、内モンゴル自治区、山西省、河北省の三省と、北京市、天津市の二つの直轄市を含んでいます。

永定河の上流部には、南側の桑乾河と北側の洋河という二つの大きな支流があります。これらの支流は内モンゴルから河北省へと流れ込み、張家口市懐来県の朱官屯で合流し、ここで永定河という名前になります。桑乾河、洋河、永定河の流域は、張家口市域南部の重要な農村地帯を形成しています。

北京市北部の延慶県から流れる嬀水河が合流した後、永定河は張家口市南部の平野に位置する官庁ダム（官庁水庫）のダム湖を通過します。このダムは北京市街に水を供給する重要な役割を担っています。ダムを過ぎると、川は山岳部に入り、官庁山峡と呼ばれる峡谷を通過します。朱官屯から官庁までの距離は約30km、官庁山峡の総延長は約108.7kmに及びます。

流路

永定河は、北京市西部の門頭溝区にある三家店で華北平原に出ます。そこから北京市西南郊外を流れ、天津市で海河に合流し、最終的には渤海へと注ぎます。三家店から渤海の河口までの延長は約200kmです。かつては海河に合流せずに直接渤海に注ぐ独立した水系でしたが、大運河建設後に水運のために流路が付け替えられ、海河に合流するようになりました。しかし、現在では海河の治水のために、永定河下流に永定新河という放水路が設けられています。

ダムと水利施設

永定河流域には、いくつかの主要なダムがあります。官庁ダム、珠窩ダム、落坡嶺ダム、三家店水利枢紐（水利用貯水池）などがその例です。また、北京郊外には有名な盧溝橋が架かっています。

環境問題

上流域では、砂漠化による保水力の低下、土壌流失、流量の減少が深刻な問題となっています。ダムより下流では流量が激減し、年間を通じてほとんどが涸れ川となっている状況です。北京首都圏の都市化に伴う水需要の増大を背景に、水不足や水質汚染が深刻化しています。

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