汐風 (駆逐艦)

駆逐艦「汐風」

概要

駆逐艦「汐風」は、大日本帝国海軍が建造した峯風型駆逐艦の8番艦です。艦名は、海や海岸近くで吹く塩気を含んだ風を意味し、1928年の資料では「海より吹き来る風」が由来とされています。

艦歴

建造と初期

1917年、大正6年度計画に基づき舞鶴海軍工廠で起工され、1920年10月22日に進水、1921年7月29日に竣工しました。竣工と同時に一等駆逐艦に類別され、横須賀鎮守府籍となりました。

駆逐隊所属と活動

1921年12月5日、第3駆逐隊に編入され、その後、第二艦隊第二水雷戦隊の指揮下に入るなど、様々な部隊に所属しました。1928年3月9日には、横須賀湾での訓練中に伊21と衝突事故を起こし、修理を受けています。

日中戦争

1937年からの日中戦争に参加し、華南沿岸での作戦に従事しました。この時期、第3駆逐隊は第三艦隊第三水雷戦隊、第四艦隊第五水雷戦隊の指揮下に入るなど、所属が変更されています。

太平洋戦争

1940年10月、姉妹艦と共に第3駆逐隊を再編成し、第一航空戦隊の指揮下でトンボ釣り（対潜哨戒）に従事しました。太平洋戦争開戦時は、第一航空艦隊第四航空戦隊第3駆逐隊に所属し、空母龍驤の護衛任務に就きました。1942年3月2日には、ビリトン島南方でオランダ海軍の掃海艇エンデを撃沈する戦果を挙げています。

アリューシャン攻略作戦

アリューシャン攻略作戦（AL作戦）に参加し、特設水上機母艦君川丸の護衛に従事。君川丸が損傷した際には、修理のため横須賀まで護衛しました。

船団護衛任務

その後、南方での船団護衛任務に従事。1943年9月13日には、護衛中の船団が米潜水艦の雷撃を受け、輸送船が沈没する事態が発生しています。10月には、複数の船団護衛中に米潜水艦の攻撃を受け、輸送船が沈没する被害も受けています。

船団護衛中の戦闘

1943年10月15日、護衛中の船団が米潜水艦タリビーの雷撃を受け、輸送船が沈没。10月27日には、米潜水艦グレイバックとシャードの攻撃により、護衛していた輸送船2隻が沈没する被害を受けました。

その他の護衛任務

1943年12月17日、護衛していた船団が米潜水艦アスプロに攻撃され、輸送船が損傷。1944年2月には、ヒ45船団を護衛中にヒ40船団の救援に向かい、その後ヒ45船団に復帰。3月にはヒ50船団の護衛任務を完了。

終戦間際の戦い

1944年10月18日、護衛中の船団が米潜水艦ブルーギルの攻撃を受け、輸送船2隻が沈没。1945年1月31日には、パトリナオ輸送作戦に参加し、アパリへの輸送任務中に空襲を受け、損傷しました。この際、行動不能になった駆逐艦「梅」を砲撃処分しています。

回天搭載艦への改造

1945年2月、呉で修理を受けた際、特攻兵器「回天」搭載艦へ改造されました。魚雷兵装や機銃の一部が撤去され、回天4基を搭載できるようになりました。

終戦とその後

終戦時は呉に所在。1945年10月5日に除籍され、復員輸送に従事した後、解体。船体は1948年8月25日に福島県小名浜港の防砂防波堤として埋設されました。

歴代艦長

歴代の艦長には、山本松四、高橋為次郎、有地十五郎、白石邦夫、神山忠、有馬直、中円尾義三、古瀬倉蔵、池田七郎、佐藤慶蔵、清水他喜雄、板倉得止、高間完、新美和貴、中島千尋、中村健夫、福岡徳治郎、中原義一郎、豊島俊一、有馬時吉、松原瀧三郎、小野四郎、矢部幸、石井汞、種子島洋二、道木正三、佐古加栄、安元至誠、市瀬信、河辺忠四郎などが名を連ねています。

脚注

注釈

- （注釈の内容は、原文では「脚注」内に記載されていましたが、具体的な注釈内容がないため、省略します。）

出典

- （出典は、参考文献として記載されている資料のリストに相当します。）

参考文献

- (Issuu) SS-208, USS GRAYBACK. Historic Naval Ships Association.
- (Issuu) SS-235, USS SHAD. Historic Naval Ships Association.
- (Issuu) SS-242, USS BLUEGILL, Part 1. Historic Naval Ships Association.
- (issuu) SS-279, USS SNOOK. Historic Naval Ships Association.
- (issuu) SS-284, USS TULLIBEE. Historic Naval Ships Association.
- アジア歴史資料センター（公式）（防衛省防衛研究所）
- 『丸スペシャル』第51号日本の駆逐艦Ⅱ、潮書房、1981年。
- 木俣滋郎『日本水雷戦史』図書出版社、1986年
- 外山操『艦長たちの軍艦史』光人社、2005年。
- 駒宮真七郎『戦時輸送船団史』出版協同社、1987年。
- 佐藤和正『艦長たちの太平洋戦争続編　17人の艦長が語った勝者の条件』光人社NF文庫、1995年12月。
- 「縁の下の役割」＜駆逐艦「梅」艦長・大西快治少佐の証言＞
- 志賀博ほか『駆逐艦物語　車引きを自称した駆逐艦乗りたちの心意気』潮書房光人社、2016年4月。
- 山口常光『陸軍軍楽隊史 - 吹奏楽物語り』三青社、1968年。
- 山本平弥ほか『秋月型駆逐艦<付・夕雲型・島風・丁型> 戦時に竣工した最新鋭駆逐艦の実力と全貌』潮書房光人社、2015年3月。
- 当時「梅」乗組・海軍上等兵曹市川國雄『香り浅き「梅」バシー海峡に消えたり　熾烈なる対空戦闘の果て誕生六ヶ月余りで海底に没した愛艦への鎮魂歌』
- 戦史研究家伊達久『丁型駆逐艦船団護衛ダイアリィ　松型十八隻と橘型十四隻の太平洋戦争』
- 海軍歴史保存会編『日本海軍史』第7巻、第9巻、第10巻、発売:第一法規出版、1995年。