江川英武

江川英武は、1853年に伊豆国韮山（現在の静岡県伊豆の国市）で、韮山代官の江川英龍（坦庵）の五男として生まれました。幼名は籌之助、後に太郎左衛門と名乗ります。号は春緑です。父の英龍は著名な人物であり、その影響を強く受けました。また、法学者の江川英文は息子にあたり、山田三良と辰野隆は娘婿にあたります。

1855年に父が亡くなると、兄の江川英敏が家督を継ぎますが、1862年に兄も若くして亡くなったため、わずか10歳で英武が江川家第38代当主となり、韮山代官を継承し、江川太郎左衛門を名乗りました。その後、鉄砲方や講武所教授方にも任命され、幕府の要職を担いました。

1868年に戊辰戦争が勃発すると、英武はすぐに明治政府に恭順の意を示しました。これにより旧領を安堵され、1869年には韮山県の知事に任命されました。1871年には、兵部省の命を受け、岩倉使節団の一員としてアメリカへ留学しました。約8年間の留学生活を経て、1879年に帰国し、内務省や大蔵省で官僚として活躍しました。

1886年、英武は町村立伊豆学校（現在の静岡県立韮山高等学校）の校長に就任しました。学校では、英語教育と柔道教育に力を入れ、特に柔道では富田常次郎を講師として招きました。しかし、学校は経営難に陥り、生徒数が減少したため、数年後に校長職を辞任し、東京へ移り住みました。また、衆議院議員選挙にも挑戦しましたが、落選しました。

1933年、神奈川県三浦郡葉山町で亡くなりました。享年81歳でした。

江川英武は、幕末の動乱期から明治維新という激動の時代を生き、代官、知事、教育者、官僚として、多岐にわたる分野で活躍しました。国際的な視野と、教育への熱意を持ち合わせた人物として、後世に語り継がれています。

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