池上秀畝

池上秀畝：伝統と革新を繋いだ日本画家

池上秀畝（いけがみ しゅうほ、1874-1944）は、明治から昭和期に活躍した日本画家です。山水画や花鳥画を主に描き、独自の画風で知られています。

秀畝は、長野県伊那市（旧高遠町）の紙商兼小間物屋の家に生まれました。彼の家系は代々絵画と関わりがあり、祖父は高遠藩御用絵師として、父も絵画を嗜むなど、幼い頃から絵画に囲まれた環境で育ちました。自伝によると、幼少期から自然と絵を描くことを覚えたと語っています。

15歳で小学校を卒業した後、本格的に絵を学ぶため、父と共に上京。様々な画家の門を叩いたのち、当時無名だった荒木寛畝に入門。4年間の内弟子として文人画を学びました。一時期は洋画にも手を出しましたが、師である寛畝に止められたといいます。

明治39年（1906年）、同門の大岡豊子（緑畝）と結婚。寛畝が主宰する詩画堂塾（のちの詩画会）の中心人物として活躍し、太平洋戦争による解散まで所属しました。

秀畝は数々の展覧会で高い評価を受けました。明治40年（1907年）には正派同志会第1回展で二等銀牌を受賞、翌年には文部省美術展覧会に初入選。大正5年（1916年）から3年連続で文展特選を受賞するなど、その才能は広く認められました。しかし、文展の審査体制に不満を抱き、同志と共に新結社の設立に尽力。文展改革の口火を切る役割を果たしました。大正8年（1919年）には、新設された帝展で無鑑査作家となり、昭和8年（1933年）には帝展審査員を務めるなど、日本画壇における彼の影響力は絶大でした。

秀畝は、後進の育成にも力を注ぎました。伝神洞画塾を主宰し、多くの弟子を育成しました。晩年まで精力的に作品を発表し続けましたが、昭和19年（1944年）、東京都下谷区の自宅で狭心症により亡くなりました。

没後も、秀畝の作品は高い評価を受け続けています。生誕150年となる令和6年（2024年）には、出身地の伊那市を始め、練馬区立美術館、長野県立美術館など各地で記念展が開催され、その作品は多くの人々に感動を与え続けています。彼の作品からは、伝統的な日本画の技術と、近代的な感性が融合した独特の美意識が感じられます。

主な師匠・弟子

師匠: 荒木寛畝
弟子: 山川秀峰、小林秀恒など

主な参考文献

『思文閣墨蹟資料目録 和の美』454号、2010年
『山水花鳥の美 池上秀畝展』 練馬区立美術館、1988年
* 『池上秀畝展』 信濃毎日新聞社、1992年

池上秀畝は、伝統を継承しながらも常に革新を追求した、真に優れた日本画家でした。彼の作品は、これからも多くの人々に感動と inspiration を与え続けることでしょう。

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