荒木寛畝

荒木寛畝：近代日本画壇を彩った巨匠

荒木寛畝（あらき かんぽ、1831年7月24日 - 1915年6月2日）は、日本の幕末から明治時代にかけて活躍した、日本画界に大きな足跡を残した巨匠です。

幼少期から画家としての才能を開花

江戸芝赤羽橋に生まれた寛畝は、代々増上寺の行者を務めていた田中家に生まれました。幼い頃から絵を描くことを好み、9歳の時、谷文晁系の絵師である荒木寛快に入門。算盤などの他の学習には全く興味を示さず、絵を描くことに没頭する姿は、並々ならぬ才能の片鱗を見せていました。

その後、父を亡くした寛畝は18歳で増上寺の冠誉大僧正の随身となりますが、22歳の時に師である荒木寛快に画才を見込まれ、養子として迎え入れられ、荒木姓を継ぎました。

土佐藩御用絵師としての活躍と山内容堂との深い関係

1856年、義兄である荒木寛一と共に秋月藩主黒田長元の屋敷で絵を描く機会を得ます。そこで、長元の甥であった土佐藩主山内容堂の目に留まり、1859年には土佐藩の御用絵師に抜擢されました。

御用絵師となる試験では、得意な画題を問われ、人物画を得意としていた寛畝は、楊貴妃、西施、趙飛燕、王昭君といった美女を描きました。このエピソードは、後の花鳥画で知られる寛畝が、若き日には人物画にも秀でていたことを示しています。

寛畝と山内容堂の関係は非常に深く、容堂の隠居後は、奥向きのあらゆることを任されるようになり、絵を描く時間は限られていました。容堂が病的な潔癖症であったことから、寛畝は容堂の身の回りの世話を全て担い、外出時の護衛や夜間の屋敷の見回りまで行うなど、絵を描くこと以外の多様な役割を担っていました。

洋画への挑戦と日本画への回帰

1872年、湯島聖堂で開催された博覧会で油彩画を見て感銘を受けた寛畝は、山内容堂の死後、川上冬崖、チャールズ・ワーグマン、国沢新九郎らに師事し、洋画を学びました。明治天皇や皇太后の御影を描くという大役にも携わっていますが、その心労から日本画に回帰することになります。

その後も、内国勧業[[博覧会]]や内国絵画共進会などに出品を続け、油彩画と日本画の両方を手掛けています。

日本画界での成功と後進の育成

1884年にはパリ府日本美術縦覧会に出品し、内国絵画共進会では審査員を務め、銅賞を受賞しました。その後も精力的に作品を発表し、1890年の第3回内国勧業[[博覧会]]に出品した『孔雀図』は宮内庁が買い上げるほどの評価を得ました。

60歳を過ぎてから画名はますます高まり、女子高等師範学校や華族女学校で教鞭をとり、1898年には東京美術学校（現在の東京芸術大学）教授に就任。帝室技芸員にも任命され、国内外の博覧会で数々の賞を受賞しました。

さらに、自身も画塾を開設し、荒木十畝、池上秀畝、小村雪岱など多くの弟子を育成し、日本画界の発展に貢献しました。

独自の画風と晩年

南北合派の伝統的な画法に、洋画で培った写実的な表現を取り入れた独自の画風を確立した寛畝は、特に孔雀図を得意としていました。晩年は糖尿病を患いながらも精力的に活動していましたが、1915年、85歳で生涯を閉じました。

荒木寛畝は、その精緻な描写と鮮やかな色彩、そして洋画の技法を取り入れた独自の画風で、近代日本画壇に大きな足跡を残した画家として、現在も高い評価を得ています。

もう一度検索