池田定常

池田 定常（いけだ さだつね）

池田定常は、江戸時代中期から後期にかけての日本の大名であり、若桜藩の5代藩主として知られています。彼の官位は従五位下縫殿頭、号は冠山で、松平冠山と呼ばれることもあります。彼はその生涯を通して、政治家としてだけでなく、特に文学者として高い評価を受けました。

生い立ちと藩主としての活動

定常は、1000石を持つ旗本・池田政勝の次男として生まれ、幼名は鐵之助、または恒次郎と呼ばれました。彼の人生は、先代の若桜藩主・池田定得が遺言により後継者として定常を指名したことから始まります。定得の死後、彼は藩主として家督を継ぎました。

定常は、政治的な実能力を持ちながらも、特に文学的な才能で高く評価されます。彼はその教養だけでなく、誠実で聡明な性格から周囲の大名たちからも一目置かれる存在でした。また、彼は学問や文学の分野で幅広い交流を持ち、佐藤一斎や谷文晁、塙保己一、林述斎といった著名な学者たちと親しい関係を築きました。そのため、彼は「柳の間の三学者」の一人としても知られていました。

享和2年（1802年）11月、定常は家督を長男の定興に譲り、隠居生活に入りますが、隠居後も様々な学者や文学者との交流を続け、自らの著作活動に取り組む姿勢を崩しませんでした。

著作と影響

彼の著作物は、当時の儒学や古典、地理において貴重な資料とされています。特に『論語説』や『周易管穂』、『武蔵名所考』、『浅草寺志』などは、学問的価値が高く、多くの人々に影響を与えました。また、寛政8年から翌年に記された巡見日記が中川芳雄に翻刻され、『駿河めぐり』として出版されました。文政6年には、彼の前世を語った農民少年の勝五郎を訪れ、『児子再生前世話』という作品も書きました。

人物像

定常の父である政勝は、彼が幼少の頃からの厳しい教育方針を持っており、教育係の神戸与五郎と高橋平五左衛門に対し、「大名だからといって甘やかさずに、厳しく育てるように」と命じるほどでした。定常はこの教えをよく守り、大名であるにも関わらず贅沢な生活を避けたそうです。このように、彼の人柄は謹厳実直で、武士としての誇りを持ちながらも、謙虚な姿勢を崩さない人物でした。

家族

池田定常の家族関係は、多様であり、多くの子孫を残しました。彼の妻は柿沼氏で、長男には池田定興が、さらに六男には池田定保がいます。定常の血筋は、後の若桜藩を含む日本の歴史において重要な地位を占めることになります。

最晩年と死去

定常は、天保4年（1833年）7月13日に67歳でその生涯を閉じました。彼の法号は停雲院冠山で、東京都墨田区の弘福寺や鳥取県の池田家墓所に彼の墓があります。彼の学問と文学は、今なお多くの人々に影響を及ぼしつづけています。

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