池田慶徳

池田慶徳：幕末の動乱を駆け抜けた鳥取藩主

池田慶徳（いけだ よしのり）は、幕末の鳥取藩主であり、明治維新後には初代の鳥取藩知事となった人物です。水戸藩主・徳川斉昭の五男として生まれ、後の将軍となる徳川慶喜とは異母兄弟にあたります。

水戸家から鳥取藩へ

慶徳は、水戸藩で尊王攘夷思想を唱えた徳川斉昭の息子として生まれました。幼少の頃から聡明で、容姿端麗であったと伝えられています。嘉永3年（1850年）、鳥取藩主・池田慶栄が急逝したため、その後継として迎えられました。将軍・徳川家慶から偏諱を受け「慶徳」と改名し、鳥取藩主として藩政に取り組みます。

藩主となると、まず藩校・尚徳館を拡充し、身分に関わらず学べるようにするなど、教育の普及に力を入れました。また、民意を尊重する姿勢を示し、軍制改革にも着手するなど、藩政の刷新を図りました。

文久の政局と国事周旋

文久2年（1862年）になると、薩摩藩の島津久光が朝廷と幕府の間を取り持つべく上洛し、政治の中心は京都へと移ります。当初、慶徳は国事周旋に消極的でしたが、長州藩や土佐藩が相次いで入洛すると、自身も国事周旋に乗り出すことを決意します。

朝廷が幕府に攘夷を促す勅使を派遣すると、慶徳は京都に入り、勅諚を受けます。そして、江戸へ下り、松平春嶽や山内容堂らと会談を重ね、幕府の政治に関与しました。さらに、異母弟である徳川慶喜を説得し、幕府の結束を促します。

攘夷の期限が迫る中、慶徳は幕府に攘夷の実行を求めますが、幕府の対応は遅く、慶徳は不満を募らせます。そうした中、大坂湾に進入したイギリス船を鳥取藩が砲撃するという事件が起こり、攘夷を求める世論は高まりました。

慶徳は朝廷から上洛を求められ、再び京都へ。長州藩が攘夷親征を主張する中、慶徳は阿波藩や岡山藩などと連携し、攘夷親征に反対する勢力を形成します。そして、孝明天皇の信頼を得て、朝廷内での影響力を強めていきました。

八月十八日の政変と失意

しかし、慶応3年8月18日、薩摩藩と会津藩がクーデターを起こし、長州藩勢力を朝廷から排除します（八月十八日の政変）。この政変に、鳥取藩も兵を動員して参加しました。

政変後、慶徳は長州藩に寛大な処置を求めますが、容れられませんでした。その後、薩摩藩や越前藩が開国論を唱え始めると、慶徳は京都での活動に限界を感じ、帰国します。その後、徳川慶喜が一会桑体制を築きますが、慶徳が再び中央政界に復帰することはありませんでした。

明治維新後の慶徳

明治維新後、慶徳は新政府の議定に就任し、戊辰戦争では東北地方へ出兵しました。戦功により賞典を賜り、版籍奉還後は鳥取藩知事となります。

鳥取藩の財政難を理由に、自ら廃藩置県を政府に提案し、明治7年（1874年）に藩知事を辞任。その後は隠居し、明治10年（1877年）に神戸で亡くなりました。死後、正二位を追贈され、明治40年（1907年）には従一位が贈られました。

池田慶徳は、幕末の激動期において、尊王攘夷運動に関わり、鳥取藩の舵取りを担った人物です。その生涯は、時代の変化に翻弄されながらも、藩と国家のために尽力した姿を今に伝えています。

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