沈鈞儒

沈鈞儒（しん きんじゅ）の生涯

沈鈞儒（しん きんじゅ、1875年1月2日 - 1963年6月1日）は、中国の政治家、法学者です。字は秉甫、号は衡山。浙江省嘉興府嘉興県の出身です。清朝末期から中華民国、そして中華人民共和国へと移り変わる激動の時代を生き、その中で重要な役割を果たしました。

立憲派から政学系へ

沈鈞儒は、地方官僚の家庭に生まれ、幼い頃から伝統的な学問を学びました。しかし、次第に変法派の思想に傾倒し、1903年には挙人、翌年には進士となっています。その後、日本に留学し、法政大学で法律を学びました。留学中に立憲派としての立場を強め、帰国後は浙江省の地方議会議員や教育機関の責任者などを務めました。しかし、清朝の腐敗を目の当たりにし、革命派へと転向しました。

辛亥革命後、沈鈞儒は浙江省都督府の警察局長に就任し、中国同盟会にも加入しました。その後も、教育や議会に関わり、袁世凱の皇帝即位には反対運動を展開しました。袁世凱の死後、北京政府の官僚となりますが、孫文の護法運動に参加するために広州へ赴任します。しかし、孫文との対立から、再び北京に戻り、政学系の一員として活動しました。曹錕の大総統就任には反対し、官職を辞任しました。

抗日運動の展開

1924年、孫文が国共合作を提唱すると、沈鈞儒はこれを支持しました。1926年には、北伐を支援するために反軍閥運動を展開し、浙江省の政府高官となりました。しかし、上海クーデター後、国共合作支持の姿勢を疑われ逮捕されます。釈放後は政治活動から一時離れ、大学教員や弁護士として活動しました。

満洲事変を機に、沈鈞儒は再び政治活動を始め、抗日運動を積極的に展開しました。中国民権保障同盟に加入し、上海文化救国会を組織しました。さらに、全国各界救国聯合会を結成し、中心人物として活動しました。国民党と共産党に対して、共同で抗日戦線を構築するように呼びかけましたが、蔣介石の弾圧を受け、逮捕されてしまいます。これが「七君子事件」です。世論の強い反発を受け、日中戦争勃発後に釈放されました。

釈放後、沈鈞儒は抗日運動をさらに強化し、抗敵救亡総会を設立しました。機関紙の発行や国民参政会への参加を通じて、抗日を訴えました。

民盟での活動、中華人民共和国への参加

1939年、沈鈞儒は全国各界救国聯合会を代表して統一建国同志会の結成に参加しました。同会が中国民主政団同盟に改組されると、最初は反共派の反対により加入できませんでしたが、後に加入が認められました。さらに中国民主同盟（民盟）に改組されると、中央常務委員に選出されました。

戦後、国共内戦が激化すると、沈鈞儒は内戦に反対し、民主的な新中国の建設を訴えました。中国人民救国会の主席を務め、政治協商会議にも民盟代表として参加しました。国民党による弾圧を受けながらも、香港などで活動を継続しました。

1948年、沈鈞儒は中国共産党支配区へ赴き、新政権樹立の準備活動に加わりました。中国人民政治協商会議では、政協全国委員会副主席と中央人民政府委員に選出されました。中華人民共和国成立後、初代最高人民法院院長に任命され、法律制度の確立に尽力しました。

その後も、民盟主席や全国人民代表大会常務委員会副委員長などを歴任し、中国の民主化と法治主義の発展に貢献しました。1963年6月11日、北京で病没しました。享年89歳でした。

沈鈞儒は、激動の時代を生き抜き、中国の民主化と法治主義の発展に貢献した人物として、その名は歴史に刻まれています。

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