河原明

大分県北海部郡佐賀関町（現在の杵築市）に生まれた河原明は、小学校三年生の頃から野球の世界に足を踏み入れました。佐賀関中学校時代には、チームのエースとしてマウンドを任され、その才能を開花させます。

高校は地元の大分商業高校に進学し、ここでもエースとしてチームを牽引しました。1966年秋の九州大会県予選では決勝まで進出しますが、吉良修一投手を擁する津久見高校に惜しくも敗れ去りました。しかし、翌1967年夏の全国高等学校野球選手権大会では、大分商業のエースとして甲子園の土を踏み、その名を全国に轟かせます。一回戦では網走南ヶ丘高校を、続く二回戦では小倉工業高校を相手に、いずれも相手打線を完璧に封じ込め連続完封勝利を飾りました。準々決勝では市和歌山商業と対戦し、野上俊夫投手との息詰まる投手戦が期待されましたが、この試合では相手打線に18安打を浴び、5対19という大差で敗れ、準決勝への進出は叶いませんでした。

夏の甲子園での活躍が評価され、同年8月末には全日本高校選抜チームの一員としてハワイおよびアメリカ西海岸への遠征に参加するなど、国際的な経験も積みました。秋の埼玉国体では再び決勝の舞台に進みますが、大宮高校の金子勝美投手に抑えられ、惜しくも準優勝に終わりました。この国体での東奥義塾高校の高木選手に浴びた本塁打が、野球を始めて以来初めて打たれた本塁打だったと語っています。

高校卒業を控えた1967年秋のプロ野球ドラフト会議において、西鉄ライオンズから堂々の1位指名を受け、プロ入りの夢を叶えました。高校時代は本格派のオーバースロー投手でしたが、プロの世界に入ってから、より自身の長所を活かすためにサイドスローへの投球フォーム改造に取り組みました。

プロ一年目の1968年から一軍に名を連ね、7月からは先発としてマウンドに上がる機会も得ましたが、残念ながらこの年はプロ初勝利を挙げることはできませんでした。しかし、二年目の1969年には先発ローテーションの一角として定着し、チームに貢献。8月5日には近鉄バファローズを相手にプロ入り初完封勝利を飾り、このシーズンは12勝をマークしました。翌1970年、チームは「黒い霧事件」により、エース池永正明投手ら主力投手4人を永久追放処分とするという激震に見舞われます。この未曽有の苦境の中で、河原投手は東尾修投手とともに投手陣の柱となり、チーム最多となる13勝を挙げ孤軍奮闘しました。しかし、主力流出によるチーム力の低下は覆えず、自身もリーグ最多となる19敗を喫するという厳しい一年となりました。1971年も前年オフに移籍入団した高橋明投手の加入がありましたが、チーム状況は好転せず、河原投手も4勝16敗と大きく負け越します。これにより、パシフィック・リーグでは1956年の米川泰夫投手以来となる、2年連続のリーグ最多敗戦投手という不名誉な記録を残してしまいました。それでも、二年目から四年連続で40試合以上に登板するなど、タフネスぶりを見せチームを支え続けました。1973年は出場機会が減少しましたが、夏のシーズン途中からアメリカの1Aリーグ、ローダイ・ライオンズに野球留学し、異国の地で経験を積みました。1974年にはチームに復帰し、5勝10敗の成績を残しました。

1974年オフ、河原投手は江藤慎一選手との交換トレードにより、大洋ホエールズへ移籍することになりました。移籍後、野球評論家の小西得郎氏は「将来の大洋のエースになる」と太鼓判を押すなど、大きな期待が寄せられました。大洋では、サイドスローからさらに投球フォームを横手よりやや上に変更するなど、新たな試みを行います。1975年には27試合に登板し2勝を挙げましたが、度重なる登板による身体への負担から故障が悪化し、残念ながら大洋での在籍はわずか一年でプロ野球選手としての現役生活に幕を閉じました。

プロ野球引退後は、故郷である大分市に戻り、実業家として肉料理店などの経営に携わっています。その傍ら、かつては社会人野球のクラブチームである大分ソーリンズ野球倶楽部でヘッドコーチを務めるなど、アマチュア野球の指導者としても活動し、野球界への貢献を続けています。

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