河守駅

河守駅：丹波と丹後を繋ぐ夢半ばで消えた終着駅

京都府福知山市大江町河守にあった河守駅は、北丹鉄道の終着駅として、大正12年（1923年）に開業しました。北丹鉄道は、福知山から河守を経て丸八江村まで延伸し、宮津線と接続する計画でしたが、宮津線のルート変更や戦後の経済状況などにより、河守駅が終着駅となりました。この計画変更によって、北丹鉄道が目指した丹波地方と丹後地方を結ぶという当初の目的は、実現することなく終わりました。

河守駅開業後も、幾多の困難に見舞われました。昭和28年（1953年）と昭和36年（1961年）には台風による水害で営業を休止、復旧に時間を要しました。しかし、決定打となったのは経営悪化でした。昭和41年（1966年）に着工された宮津と河守を結ぶ国鉄宮守線への編入、または国鉄からの補償を期待しましたが、叶わず、昭和46年（1971年）3月に営業休止、そして昭和49年（1974年）2月には廃駅となりました。

その後、宮守線の計画は宮津と福知山を結ぶ宮福線に変更され、第三セクターの宮福鉄道によって昭和63年（1988年）に開業しました。現在、河守駅があった場所の近くに、宮福線の大江駅が設置されています。

河守駅は地上駅で、1面1線のホーム構造を持ち、機回し線と留置線、そして終点側に貨物線が伸びていました。木造の駅舎があり、駅員が配置されていました。駅周辺は、かつて駅前商店街「ナイン」があり、現在は京都タクシーの営業所や福知山市役所支所の駐車場となっています。駅の痕跡はほとんど残っておらず、線路跡も国道175号沿いにわずかに築堤の跡が見られる程度です。公庄駅までの区間は、宮福線の線路用地として転用されています。

河守駅の廃駅は、北丹鉄道の歴史、そして丹波・丹後地方の交通史において、重要な出来事の一つと言えるでしょう。当初の壮大な計画が、様々な要因によって頓挫し、廃線に終わった経緯は、地域の開発や交通政策を考える上で、貴重な教訓となっています。また、河守駅跡地は、現在とは異なる風景が広がっており、その変遷を知ることで、地域の移り変わりを肌で感じ取ることが出来るでしょう。

年表

大正12年（1923年）9月22日: 北丹鉄道福知山 - 河守間開業に伴い河守駅開業
昭和28年（1953年）9月25日: 台風13号による水害で営業休止（福知山～下天津間は17日後に再開）
昭和29年（1954年）7月28日: 水害復旧により全線営業再開
昭和36年（1961年）9月8日: 第2室戸台風による水害で47日間営業休止
昭和46年（1971年）3月1日: 北丹鉄道営業休止、河守駅も休止
昭和49年（1974年）2月28日: 北丹鉄道廃止許可、河守駅廃駅

参考文献

今尾恵介（監修）『日本鉄道旅行地図帳』 9 関西2、新潮社、2008年
今尾恵介（編著）『新・鉄道廃線跡を歩く』 4（近畿・中国編）、JTBパブリッシング、2010年
京都大学鉄道研究会「北丹鉄道」『鉄道ピクトリアル』第19巻12月臨時増刊号、鉄道図書刊行会、1969年
田中真人、宇田正、西藤二郎「第12章 丹波・丹後の地域鉄道―加悦鉄道・北丹鉄道・丹波の幻の鉄道」『京都滋賀 鉄道の歴史』京都新聞社、1998年
寺田裕一『新 消えた轍 ―ローカル私鉄廃線跡探訪―』 8 近畿、ネコ・パブリッシング、2010年
福知山市開発公社 編『北丹鉄道の歴史』福知山市開発公社、1988年
山本武男『北丹鉄道 ―河川敷に消えた小鉄道―』ネコ・パブリッシング、2000年
吉田恭一『地形図で辿る廃線跡 古地図とともにいまはなき鉄道を歩く』心交社、1998年

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