河東純一

河東純一

河東純一（かとう じゅんいち）は、日本の国家公務員であり、書家としても知られる人物です。1946年（昭和21年）に茨城県で生まれました。公務員としては、総理府および中央省庁再編後の内閣府において、長年にわたり内閣総理大臣官房人事課の辞令専門官という要職を務めました。書家としての号は「峰城」を名乗っています。

概要

茨城県で育った河東氏は、総理府で公職に就き、その後内閣府に勤務しました。その職務を通じて、国家や政府の重要な決定に関わる「官記」や、叙位の際に用いられる「位記」、そして人事発令を伝える「辞令書」など、数多くの公文書の筆耕を担当しました。特に有名な業績として、1989年（平成元年）1月7日に当時の内閣官房長官であった小渕恵三氏が新しい元号「平成」を発表した際に掲げられた、あの歴史的な書を手掛けたことが挙げられます。また、公文書以外にも、母校である大東文化大学のシンボルマークとなるロゴのデザインも、河東氏の書によって生み出されたものです。

来歴

生い立ち

茨城県の出身です。大東文化大学第一高等学校に進学後、書道の道を志すようになりました。書家となるべく、夜な夜な100枚もの紙に向かい、集中的な練習を重ねることで、その腕を磨きました。高校卒業後、大東文化大学文学部中国文学科に進み、1969年（昭和44年）に同学部を卒業しました。大学在学中は、大東文化大学の教員であった永井暁舟氏や松井如流氏ら著名な書家から指導を受け、薫陶を受けました。

官界

1974年（昭和49年）12月、総理府に奉職しました。以来、内閣総理大臣官房の人事課辞令係に配属され、辞令に関する職務に従事しました。1980年（昭和55年）には、前任者の退官に伴い、後任の辞令専門官に就任しました。辞令専門官として、親任官や認証官の「官記」をはじめとする重要な公文書の揮毫を一手に引き受けました。約30年間の公務員生活を通じて、官記や位記、そして辞令書など、実に20万枚を超える重要な文書の筆耕に携わりました。中でも特筆されるのは、1989年（昭和64年）1月7日の改元の際に、当時の総理大臣官邸で行われた記者会見において、小渕恵三内閣官房長官が発表した新元号「平成」の書を揮毫したことです。

これまでの長年にわたる業績と、辞令専門官としての職務への献身が認められ、2005年（平成17年）には第18回人事院総裁賞の個人部門を受賞しました。人事院総裁賞選考委員会の審議の際には、河東氏が手掛けた辞令書の実物見本が委員たちの目に触れる機会があり、その卓越した筆致に委員全員が感嘆の声を上げた、と伝えられています。審議の結果、委員全員による満場一致で受賞が推薦されました。人事院総裁賞受賞時には、当時の天皇陛下、皇后陛下にも拝謁するという栄誉に浴しました。なお、河東氏自身は、受賞の内示を受けるまで人事院総裁賞という賞の存在を知らず、突然の受賞に大変驚き、困惑したと後に語っています。

退官後

2007年（平成19年）3月31日付で、内閣府を定年退官しました。退官後は、埼玉県において書道教室を主宰し、後進の指導にあたっています。公務員を退いた後も、河東氏の書は様々な場面で活用されています。例えば、総理大臣官邸では、国外からの賓客に対して贈呈される記念品の風呂敷に、河東氏の書がデザインとして用いられています。また、官公庁以外では、母校である大東文化大学の公式ロゴマークにも、河東氏の書が採用されています。

人物

『平成』の書

1989年に小渕恵三官房長官が掲げた歴史的な「平成」の書を揮毫しましたが、河東氏自身は、あの発表の映像を見るたびに、展覧会場で自分の作品の前にじっと立つのが気恥ずかしいのと同様に、自身の書を見ることに照れを感じていると述べています。「平成」の書の出来栄えについては、「42歳の時の書であり、あれはあれで良い」と納得している様子です。

小渕恵三

2019年（平成31年）3月31日には、小渕恵三氏の妻である小渕千鶴子氏からの誘いを受け、初めて小渕氏の墓を訪れ墓参を行いました。この墓参には、小渕氏の長女である小渕暁子氏や、小渕氏のもとで内閣官房長官秘書官を務めた石附弘氏らも同行しました。林昌寺にある小渕氏の墓だけでなく、小渕氏の銅像が建立されているツインプラザも訪問しました。

略歴

1946年 - 茨城県にて誕生。
1969年 - 大東文化大学文学部卒業。
1974年 - 総理府入府。
1980年 - 総理府辞令専門官に就任。
2001年 - 中央省庁再編に伴い、内閣府辞令専門官となる。
2005年 - 第18回人事院総裁賞（個人部門）を受賞。
2007年 - 内閣府を定年退官。

関連項目

位階
勲章、勲等
御璽、国璽
御名御璽
書道史
* 茂住修身 - 新しい元号「令和」の書を揮毫した辞令専門官。河東氏の大東文化大学の後輩にあたる。

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