沼津城

沼津城の歴史

沼津城（ぬまづじょう）は、かつて駿河国駿東郡、現在の静岡県沼津市大手町に位置していた日本の城です。別名として観潮城とも呼ばれていました。

初代沼津藩主となった大久保忠佐は、当初、三枚橋城を藩庁としていましたが、1614年と1641年の二度の大火によって焼失してしまいました。その後、この地は開墾地となりましたが、1778年、新たに沼津藩主となった水野忠友が、この地での築城を願い出て許可され、城の建設準備が始まりました。

水野忠友は、松本藩時代の軍学者であり、旧臣とも関係のあった吉田雪翁を江戸から沼津に呼び寄せ、縄張り（城の設計）を依頼しました。吉田雪翁は、数日かけて本丸や二の丸などの縄張りを行いましたが、最終的には田沼意次の家臣である須藤次郎兵衛に依頼することとなり、着工は延期されました。

1779年、田沼家の国表である遠江国相良の大工、善四郎が普請工事全体の統括を担当し、棟梁には浅間町の大工幸右衛門が選ばれ、水盛りも任されました。また、同じく浅間町の大工平三郎が御用掛かりを務め、縄張りは須藤次郎兵衛自らが担当しました。

翌1780年、須藤次郎兵衛の絵図面で築城が認可され、その年の暮れに完成しました。城地請け渡しから完成までに、満3年を費やしました。

築城資金は、幕府から沼津藩に三千両が貸与され、1778年には韮山代官から土地が引き渡され、1779年には縄張りが幕府に認可されました。

城の完成後も、普請や拡張が続けられ、1830年には敷地が拡張され、この場所は御添地と呼ばれ、現在の沼津市添地町としてその名残をとどめています。1831年から1832年にかけては二重櫓が完成し、1850年には幕府から普請の許可が下りています。

沼津城は、三枚橋城と同じ場所に建てられ、堀の一部を埋め立てるなどして三枚橋城をそのまま利用したと考えられています。ただし、沼津城は政庁としての側面が強く、面積も三枚橋城の約半分程度でした。

江戸から遠州へ赴任する際に沼津を通過した林靏梁は、その様子を「沼津城　手薄之様子　武風之衰　可咲也」と日記に記しており、その城の様子が手薄であり、武士の気風が衰えていることを嘆いています。

沼津城は、梯郭式平山城で、狩野川に隣接して本丸が築かれ、その北西に二の丸、三ノ丸が配置されていました。本丸には三層の櫓が建てられ、二の丸には御殿が置かれていました。

最終的には、水野家8代の5万石の城下町として栄えましたが、一時期、沼津兵学校が置かれたものの、1872年には東京に移転し、翌年には廃城令を待たずして破却されました。

敷地は民間に払い下げられ、度重なる大火や道路の新設、堀の埋め立てなどにより、城郭は失われました。現在では大手町という地名が残るのみですが、本丸跡は中央公園として整備され「沼津城本丸址」の碑が建てられています。また、二の丸（後の沼津兵学校）跡には城岡神社が建っています。

ほぼ完全に破壊された城は珍しいとされますが、数少ない現存する遺構として、市内の光長寺辻之坊山門が、城門（中庭門とも）が移築されたものと伝えられています。また、市内香貫の民家に奥座敷があったとのことですが、現在では取り壊されています。

廃城

明治時代に入り、水野藩が上総国（現在の千葉県）菊間に移封されると、1868年に沼津兵学校が開校し、城はその校舎として使用されました。しかし、1871年には兵部省の管轄となり、沼津出張兵学寮と改称されました。1872年、陸軍省の命により、沼津出張兵学寮は東京へ引き上げられ、閉校となりました。その後、城は競売にかけられ解体されました。

1889年には東海道線が開通し、沼津駅前から南北に縦貫道路が設けられ、沼津城を南北に縦断する形となりました。その後、沼津は二度の大火に見舞われ、城の堀は埋められ、1945年の空襲により、城の面影を残すものはほとんどなくなりました。

城下町

沼津城下は、はじめ港町として発展し、次いで宿場町として栄えた後に城下町となりました。そのため、城郭や侍屋敷は町の西北隅に建築され、城下町としての区画整理はされていませんでした。宿場町として栄えた江戸時代前期には、本陣や旅籠屋のあった本町や下本町を中心に栄えましたが、城下町の性格が強まった江戸時代後期には、大手前の上土町が城下市場として重要性を増しました。宿通りと侍屋敷の間の空き地は町家で埋められ、新たに大門、新裏町、八幡町などが発展しました。

城下町には農漁村の生産物が集まり、藩内全域の物資の集散地として栄えました。商人は、城下町の居住者に生活必需品を供給するほか、農村部にも日用品を供給しました。

1868年の報告書によると、場内には侍小屋105軒と、長屋56棟385軒が存在し、男性1,181人、女性1,188人の計2,369人が居住していました。

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