林靏梁

林靏梁（はやし かくりょう）

林靏梁は、文化3年（1806年）に上野国群馬郡萩原村（現在の群馬県高崎市）で生まれ、明治11年（1878年）に没した幕末の儒学者です。幼名は長孺、通称として鐵蔵、伊太郎を名乗りました。「靏」の字は「雨」冠に「鶴」と書きます。

生涯

官吏としての活躍

当初、林靏梁は御箪笥同心という下級役人でしたが、その文才が藤田東湖に認められ、奥火元番に抜擢され昇進の道を歩み始めます。その後、甲府勤番師弟の学問所である徽典館の学頭などを歴任し、嘉永6年（1853年）には遠江国中泉（現在の静岡県磐田市）代官に任命されました。代官として、安政の大地震からの復興に尽力し、貧民救済のための恵済倉を考案するなど、その手腕を発揮しました。また、三河・遠江の詳細な地図を作成したことで、幕府からの信頼を得ました。

出羽国柴橋（現在の山形県寒河江市）代官時代には、銅山開発に尽力し、その功績を上げました。外圧に対しては、藤森天山らと共に鎖港を主張しました。

維新後

維新後も幕臣としての立場を貫き、「何の面目あって天日を仰がん」と深編笠を被って外出していたと伝えられています。

学問と交流

佐藤一斎、松崎慊堂、長野豊山（儒学）、渡辺崋山、箕作阮甫（洋学）、窪田清音（長沼流兵学）といった多くの学者に師事し、幅広い学問を修めました。その卓越した学識から、水戸藩主・徳川斉昭、信州松代藩主・真田幸貫、福井藩主・松平慶永、佐賀藩主・鍋島直正、土浦藩主・土屋寅直といった幕末の名君たちと親交がありました。

また、川路聖謨、岩瀬忠震、大久保一翁、羽倉簡堂などの幕臣、佐久間象山、若山勿堂、岡本秋暉ら学者とも親交があり、会沢正志斎、大久保要、橋本左内ら志士とも意見を交わしました。遠州の代官時代には、国学者の石川依平、画家の福田半香、三宅鴨渓、医師の渡辺玄知、袋井宿の孤瑟と親しく交流しました。

著作と評価

漢文で著した『靏梁文鈔』は、夏目漱石や三田村鳶魚など、明治時代のインテリ青年に愛読されました。『林靏梁日記』は、38歳から56歳までの19年間を記録した日記であり、当時の社会情勢を知る上で貴重な資料として高く評価されています。

墓所と追贈

墓所は東京都港区赤坂の澄泉寺にあります。大正4年（1915年）には正五位が追贈されました。

家族

正室：川島達馬の娘・久
長男：国太郎
次男：鋼三郎（羽倉簡堂の養子）
長女：鈴
継室：中井数馬の妹・庫子
3男：卓四郎
次女：琴
3女：瑟
養女：中井数馬の娘・喜美（杉浦梅潭室）

逸話

出身地が赤城山に近かったことから、徳川埋蔵金の実行役として語られることがあります。
柴橋代官時代には、寒河江氏最後の当主・寒河江高基の墓碑が長らく存在しなかったことを嘆き、終焉の地である御楯山に墓碑を建立しました。

参考文献

田口英爾『最後の箱館奉行の日記』（新潮選書、1995年）
保田晴男『ある文人代官の幕末日記』（吉川弘文館、2009年）
坂口筑母『小伝林鶴梁』

関連項目

徳川埋蔵金

外部リンク

磐田市立図書館「磐田の著名人　林　鶴梁」

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