泉州市

泉州市：歴史と文化が交差する古都

泉州市（せんしゅうし）は、中国福建省の南東部に位置する地級市であり、その歴史は古く、数々の変遷を経てきました。かつて「ザイトン」と呼ばれたこの街は、海上交易の要として栄え、多くの人々が行き交う国際都市でした。

地理

泉州市は、別名「鯉城」「刺桐」「温陵」とも呼ばれ、福建省の東南に位置します。市内には戴雲山脈がそびえ、晋江が流れています。近隣都市としては、北東に福州、南西に廈門が位置しています。

歴史

泉州の歴史は古く、夏・商代には揚州に属し、周代には七閩と呼ばれていました。春秋時代には越の領土となり、戦国時代には楚によって滅ぼされた越の地に、閩越が成立しました。秦代には閩中郡が設置され、本格的な行政区が設けられました。

260年には呉によって東安県が設置され、西晋末期には中原からの移民が流入し、先進的な技術や文化が伝えられました。南朝梁の時代には南安郡の郡治が置かれ、南朝陳によって閩州が設置されました。

隋代には泉州と改称されたものの、後に閩州、建安郡と変遷を繰り返しました。唐代には再び泉州となり、海上交易ルートが確立され、明州や広州と並ぶ貿易港として繁栄しました。特に、揚州や広州での大虐殺の影響で、西方との貿易が泉州に集中しました。

909年には王審知が福州で閩国を建国しましたが、内乱により泉州に国際貿易が集中するようになりました。その後、南[[唐]]が閩国を滅ぼし、泉州は自治を維持しました。留従効が支配する泉州は南[[唐]]から事実上の独立を果たし、清源軍を設置しました。泉州は「刺桐城」として知られるようになり、海外貿易が盛んになりました。978年、平海軍節度使の陳洪進が北宋に投降し、泉州は北宋の支配下に入りました。

元代には、アラブ人の蒲寿庚が重用され、港湾都市として発展しました。「陶磁の道」の拠点として、アラブ人やペルシャ人などが居住する国際都市となり、『アラビアンナイト』にも登場しました。マルコ・ポーロは「ザイトン」としてこの地を紹介し、イブン・バットゥータは「世界最大の港」と記しました。

明代になると、海岸線の後退により港湾都市としての機能が低下し、海上交易の中心地は長楽や廈門へと移りました。しかし、鄭和の活躍により、南洋貿易が盛んになり、多くの華僑が誕生しました。

中[[華人民共和国]]成立後は、行政区画の再編を経て、1986年に地級市としての泉州市が成立しました。

行政区画

泉州市は、4つの市轄区、3つの県級市、5つの県を管轄しています。

市轄区: 豊沢区、鯉城区、洛江区、泉港区
県級市: 石獅市、晋江市、南安市
県: 恵安県、安渓県、永春県、徳化県、金門県（中華民国が統治）

経済

泉州市は、福建省の経済中心地として、長年GDPが省内1位を誇っています。特に、安渓県の烏龍茶、晋江市の靴、南安市の石材、徳化県の磁器、永春県の酢などが有名です。

文化

泉州では、閩南語を用いた伝統芸能が盛んです。「南音」「泉州北管」「泉州拍胸舞」「梨園戯」「高甲戯」「泉州提線木偶戯」などの国家級非物質文化遺産が多く存在します。また、恵安の石彫り、泉州花灯、徳化磁器の焼き物技術、恵安の女服飾なども有名です。

観光

泉州市には、数多くの観光名所があります。

山: 清源山、九日山、紫帽山、仙公山、戴雲山
海: 深滬湾海底古森林自然保護区、崇武古城
橋: 洛陽橋、安平橋
名所・旧跡: 泉州開元寺、泉州府文廟、清浄寺、泉州天后宮、通淮関岳廟、イスラム教聖墓、草庵
伝統的建物: 蔡氏古民居、五店市、西街、中山路、南少林寺
公園: 西湖公園、東湖公園、中山公園、石筍公園
博物館: 泉州博物館、中国閩台縁博物館、泉州海外交通史博物館、泉州華僑歴史博物館、泉州イスラム教博物館

教育

泉州市には、多くの高等教育機関があります。華僑大学、泉州師範学院、仰恩大学などが有名です。

交通

泉州晋江国際空港があり、鉄道では福廈旅客専用線、福廈線、興泉線が利用できます。また、高速道路や国道も整備されています。

世界遺産

2021年、泉州市は「泉州：宋元中国の世界海洋商業貿易センター」として世界文化遺産に登録されました。これは、10世紀から14世紀にかけて、泉州市が東アジアおよび東南アジアの海上貿易ネットワークの拠点として繁栄していたことを示すものです。

指定資産

旧市街（市舶司遺跡、徳済門遺跡、天后宮、南外宗正司遺跡、府文廟、開元寺、清浄寺を含む）
順済橋遺跡
真武廟と江口埠頭
石湖埠頭
六勝塔
万寿塔
安平橋
草庵の摩尼光仏造像
洛陽橋
イスラム教聖墓
老君岩造像
九日山祈風石刻
磁竈窯系金交椅山窯跡
徳化の窯跡（尾林・内坂窯跡）
徳化の窯跡（屈斗宮窯跡）
安渓青陽の下草埔製鉄遺跡

泉州市は、その豊かな歴史と文化、そして美しい自然が調和した魅力的な都市です。この街を訪れることで、古の海上交易の息吹を感じることができるでしょう。

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