法徳寺 (奈良市)

法徳寺（ほうとくじ）

法徳寺は、奈良県奈良市十輪院町に位置する融通念仏宗の寺院です。光明山、院号を倍巌院と称し、本尊として阿弥陀如来立像を安置しています。

歴史

法徳寺は元々、真言宗の元興寺別院であり、多聞院と呼ばれていたと伝えられていますが、その詳細な経緯は明らかではありません。慶長10年（1605年）に倍巌上人の尽力により融通念仏宗に改宗し、この時から法徳寺は中興の時代を迎えます。現在も住職は代々、倍巌の姓を受け継いでいます。融通念仏宗においては、大和十大寺の一つとして数えられ、第10代良山上人や第14代観山上人のような高僧を輩出してきました。

建造物

本堂

明治10年（1877年）と明治25年（1892年）の二度にわたる火災で本堂が焼失したため、現在では磯城郡下の天理教の堂を移築したものが本堂として使用されています。大きさは六間四面です。本堂中央には、本尊である阿弥陀如来立像と箱入りの十一尊天得如来画像が祀られています。右脇壇には、融通念仏宗の祖である良忍上人と法明上人の両祖師画像、そして木造の弘法大師坐像が安置されています。その他、阿弥陀如来像、愛染明王像、多聞天像なども祀られています。阿弥陀如来立像は、穏やかな表情と柔らかな肉付き、浅く整った衣の襞など、12世紀頃の仏像の特色をよく表しています。

観音堂

近年建立された鉄筋造りの観音堂には、西国三十三ヶ所観音霊場の本尊に因んだ33体の仏像と、その化身像などが祀られています。

毘沙門堂

毘沙門堂は、法徳寺の山門に隣接して西側に位置し、正面は境内ではなく道路に面しています。境内からは堂の背後から入ることができます。本尊である毘沙門天立像の前には宝鏡があり、台には「元禄十（丁丑）（1697年）正月日大黒屋七兵衛」の陰刻銘が見られます。本尊の背後、左右の壇には、愛染明王像、弁財天像、不動明王と庚申の三猿などが祀られています。毘沙門天像は元々、元興寺伽藍の鬼門除けの天王であったとされ、北西隣の毘沙門町に存在し、町名もこの毘沙門天像に由来すると伝えられていましたが、明治11年（1878年）に本堂へ遷されました。毘沙門天と弁財天は近隣住民の信仰の中心となっており、毎年7月15日には夏祭りが行われます。

位牌堂

位牌堂は、元の観音堂で、享保14年（1729年）に当時の寺主であった淋渓によって再建された二間四面の土蔵造りの建物です。明治25年（1892年）の火災では焼失を免れました。新しい観音堂が完成したため、現在は位牌堂として使用されています。

法徳寺は、その長い歴史と数々の文化財を通じて、奈良の歴史と文化を今に伝える貴重な寺院です。

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