法理独立

法理独立とは

法理独立（ほうりどくりつ）は、中華民国（台湾）において、中国国民党政権が台湾住民の国政選挙の実施などの要求を拒否する際に用いられる概念です。この概念は、実質的に中華民国の台湾化にほぼ等しい意味を持っています。法理独立は、台湾独立運動の法的理論である台湾地位未定論とは必ずしも一致しません。台湾地位未定論は、台湾が中華民国の領土ではなく不法に接収されたとする立場を示しています。それに対し、法理独立は中華民国がその支配地域を台湾を中心とする島嶼に限定することを主張しつつ、その主権国家としての地位を否定しません。しかし、両者は台湾の民主化とその国家の重要性においては共通の価値観を持っており、同じ個人が異なる時期にこれらの概念を使い分けることも見られます。

中国国民党の独裁と法統

第二次世界大戦後の台湾では、1987年まで長い間戒厳令が施行され、中国国民党政権が中華民国政府として自任し、独裁政治を維持していました。蔣介石政権は大陸への反攻を目指し、台湾を軍事基地とみなして住民のための政治を否定しました。政権は台湾を中華民国領土の一部とし、台湾住民による選挙によって国会を改選することはできないとし、国民の民主化の要求を「法理独立」として弾圧しました。

国民党政権は、“法統”を自称し、憲法を形式的に遵守していると主張しながらも、実質的には住民の権利を侵害していました。この“法統”という考え方は、国民大会システムや長期にわたって改選されていない国会を通じて、国民党政権の正当性を支持するものでした。その結果、台湾住民からの民主化の要求が圧殺されるという現状がありました。

しかし、中国本土からの知識人たちは、法統の批判を行い、法理独立の主張を行う者もいました。自由中国を発行した雷震は、民主化运动のために逮捕されましたが、その後、「中華台湾民主国」との国號改称を提唱しました。彼と同じ運動をした傅正は、後に民主進歩党を創設し、同様の立場を取っていました。

李登輝政権の憲政改革

李登輝政権は1990年から憲政改革を推進し、1991年には動員戡乱時期臨時条款を廃止した憲法増修条文を制定しました。この増修条文は法理独立を否定していますが、蔣介石時代の観点から見ると、法理独立の本質を脅かすものであったと言えます。その後、台湾では複数回の憲法改正が実施され、住民自身による政治の実現が徐々に進みました。

また、李登輝は「中華民国在台湾」や「新台湾人」といった概念を用いて、中華民国の台湾化を主張しました。これにより、教育を受けた新たな世代は従来の世代に比べ、国民党政権のもとでの疎外感を持たない傾向があります。しかし、李登輝は後に「中華民国はとっくに消滅した国家」と発言し、台湾の独立性を支持する立場に変わりました。

近年の法理独立批判

法理独立に基づく中華民国の台湾化は、表面的には達成されたように思われますが、現在でも台湾の政治において「法理独立」が使用されることがあります。特に、泛藍連盟や中華人民共和国の一部が、この言葉を使って対立する泛緑連盟を非難するケースが見られます。李登輝の1999年の二国論や陳水扁の一辺一国の発言に対しては、中華人民共和国政府がそれを法理独立とみなし、軍事行動の可能性を示唆することもありました。

2005年には国民大会の廃止とそれに伴う憲法改正の手続きが公民投票で行う決定がされ、これに対しても法理独立として非難される事例が出ています。また、陳水扁政権は憲法の全面改正を主張し、表向きの独立性を強調しましたが、実際にはこれも法理独立とみなされることがありました。

このように、法理独立という概念は台湾における政治的な対立と深く結びついており、その意味するところは状況に応じて変化しています。

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