法秀院 (山内一豊母)

法秀院（ほうしゅういん）

法秀院は、生年不詳ながら天正14年7月17日（1586年8月31日）に没したとされる戦国時代の女性です。山内盛豊の妻であり、山内一豊、康豊の母として知られています。法秀尼（ほうしゅうに）とも呼ばれます。

来歴

法秀院の出自については、羽黒城主梶原氏の出身とする説が有力ですが、尾張国二宮氏の出身とする説もあり、詳細は明らかになっていません。盛豊との間には四男三女をもうけたとされています。しかし、長男は早世、次男は夫と共に岩倉城で戦死し、三男の一豊は母や姉弟妹と共に逃れることとなりました。その後、法秀院は子供たちを連れて近江国宇賀野（現在の米原市北部）の長野家に身を寄せました。長野家は在原業平の後裔とされ、朝廷や公卿に関わる職務を行っていたため、武家の干渉を避けることができたと言われています。一豊がこの地で母と同居していたかは不明ですが、長野家に一家が匿われているという噂が立ったため、長野家は警戒を強めたと伝えられています。

また、法秀院は長野家で近隣の子供たちに裁縫や行儀作法を教えており、その中に後の見性院がいたとされています。息子の一豊に良い妻を娶らせたいと考えていた法秀院は、この見性院を一豊に娶せました。この縁組が、後の山内家の繁栄に繋がったと考えられています。

長野家には現在も法秀院の法号書や、まな板代わりに使っていたとされる一升枡が保存されています。また、一豊が名馬を購入したという逸話は、実は法秀院が資金を提供したとする説もあります。「法秀院殿由緒書」や「長野家由緒書」には、いずれも母君が黄金を与えたと記されています。

墓所

法秀院は、一豊が長浜城主であった天正14年（1586年）7月17日に、長野家で病死したと伝えられています。現在、長野家には法秀院縁月妙因大姉の位牌があり、墓所は宇賀野にあります。しかし、天正18年死去説や、長浜で死去して要法寺に埋葬されたという説も存在します。要法寺は後に土佐に移され、その際に位牌が安置されたとされています。

山内家では法秀院の存在が忘れられていましたが、寛政2年に土佐藩が藩士馬詰権之助を派遣して調査を行い、長野家を保護することとなりました。馬詰は、当主の早世が祖先の墓所を疎略にしたためであると聞き、近江にその墓所があることを知って訪れたと返答しています。当初は彦根藩や土佐藩からの照会もなく長野家も困惑しましたが、後に彦根藩の了解を得ました。その後、長野家は永代秩禄を受け、これは明治の廃藩置県まで続きました。

大正時代には『歴代公紀』の編集委員による調査も行われましたが、その際、一部の所持品が当時のものではないとされました。また、『土州様御墓所ニ付書翰類留記』によると、宇賀野の墓所では、毎年6月末日に子供たちが掃除を行い、7月13日には聖霊迎え、15日夕方には聖霊送りが行われていたとされています。

墓所は嘉永6年までは東西5間半（10メートル）、南北7間（12.7メートル）の敷地に墓石を置いたものでしたが、その後整備され、石積みの基壇に玉垣を巡らせたものとなりました。しかし、土佐で作られていた墓石は大波で流失してしまったため、台石のみが完成しました。さらに明治25年には、旧土佐藩士浜田源之助の進言が山内侯爵家に届き、木製の玉垣と三つ柏紋が入った門扉が新設されました。平成9年には初めて宝篋印塔が建てられました。

法秀院を演じた人物

佐久間良子（功名が辻 (NHK大河ドラマ)）

原作『功名が辻』では千代の母が法秀院ですが、大河ドラマでは史実通り一豊の母となっています。

注釈

[脚注]

参考文献

小和田哲男監修 木嵜正弘編『歴史・文化ガイド 山内一豊と千代』日本放送出版協会、2005年。
長浜城歴史博物館編『一豊と秀吉が駆け抜けた時代－夫人が支えた戦国史－』サンライズ出版、2005年。
山本大『山内一豊』新人物往来社、2005年。
渡部淳『検証・山内一豊伝説 「内助の功」と「大出世」の虚実』講談社<講談社現代新書>、2005年。

外部リンク

山内一豊公母法秀院の墓－全国旅そうだん
* 要法寺

もう一度検索