法美郡

法美郡（ほうみぐん）の歴史と地域の変遷

法美郡は、鳥取県に存在した郡であり、その設立は律令制に基づくもので、7世紀後半にさかのぼるとされています。この郡は古代から近世までの長い歴史を経て、明治維新による行政改革の結果一度は廃止されましたが、その後すぐに復活し、1896年には周辺の郡と統合されて岩美郡となりました。

郡域の特性

法美郡の地域は、特に袋川（かつての法美川）の上流域に位置し、この地名は古代からのものであり、郡中央部を流れる川がその名の由来です。この地域は、千代川水系の一部として重要な位置を占めており、平安時代後期から近世にかけては法美川、因幡川、国府川と名付けられていました。また、地域の特徴として袋川の支流である美歎川や大石川などが流れ、この地の水源として重要な役割を果たしていました。

古代の法律や制度に則り、法美郡は当初は国府町に位置しており、ここには国家の機関も設置されていました。特に古代には、国府町には文武天皇の采女である伊福吉部徳足比売のお墓があり、この場所は今日でも国の史跡に指定されています。

歴史的背景

『因幡国伊福部臣古志』という歴史書の中には、法美郡の成立に関する記述があります。文献によれば、因幡国において初めて設けられた評は水依評であり、そこから分割されて法美評が成立したとされています。このことから、法美郡は古代日本の行政区画として重要な役割を果たしていたことが示されています。

特に、因幡国においては水依評が668年に設けられ、その後の行政改革で評が郡へと変わり法美郡が成立しました。この変化は、中央集権化の進展と地方豪族の力を制約するために行われたとされています。

『和名類聚抄』においては、法美郡は「下」郡に位置づけされ、いくつかの郷が存在しました。地域には大草郷、津井郷、服部郷などの歴史的な郷名があり、古代から中世にかけての土地利用や居住環境に関する重要な情報が記録されています。これらの郷の一部は中世まで続く一方で、政治的変動により他の郡へと編成されることもありました。

中世から近世にかけての法美郡

鎌倉時代以降、法美郡では荘園や武士の進出が見られましたが、依然として国衙の支配が続き、古代の名前がそのまま残る地域も多く存在しました。しかし、承久の乱を契機に、東国武士の進入が顕著になったため、法美郡もその影響を受けました。戦乱の結果、地域の有力者たちが力を失う一方で、宇倍神社が保有した荘園は他の国へ寄進されるなど、さまざまな変動がありました。

戦国時代に入ると、法美郡もさまざまな武士勢力の侵攻を受けることになります。尼子氏や毛利氏の争奪戦の中、法美郡は重要な通路として利用され、多くの戦闘が繰り広げられました。この地域もまた、時代の流れとともにその運命を辿ることになります。

近現代の法美郡

明治維新後、因幡国の全域は鳥取県に組み込まれ、法美郡は一旦廃止されましたが、その後再編成が行われ、法美郡はしばらくの間に戻されました。1879年に新たに行政区画として再発足し、その後さらなる合併が進む中で1896年には岩美郡となり、法美郡という名称は消えていくことになります。

最終的に法美郡は現代の鳥取市の一部としてその所在地となり、昔の郡の存在に基づいた様々な文化や伝統が今なお息づいています。法美郡は歴史の中で多くの変遷を経て、地域の人々の生活と産業に大きな影響を与えてきたのです。

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