波九型潜水艦

波九型潜水艦

波九型潜水艦は、日本海軍が保有した潜水艦の艦級であり、一般に「S型」とも呼ばれています。この艦級は、最後の三等潜水艦という位置付けで、同型艦は2隻存在しました。

概要

波九型は、フランスのシュネデール社が設計したローブーフ型潜水艦を基にしています。当初、2隻ともシュネデール社によって建造される予定でしたが、第一次世界大戦の勃発により、一隻がフランス海軍に供与されたため、代替として日本の呉海軍工廠で一隻が建造されることとなりました。最初に建造された艦は1917年に竣工し、次いで1920年に日本建造艦が完成しましたが、1929年にはどちらの艦も除籍されています。また、波九型潜水艦は戦果や戦歴を持ちません。

この艦級の特筆すべき点は、ローブーフが考案した複殻式の船殻設計を採用していることです。この設計では、メインタンクを耐圧殻の外側に配置するため、伝統的な単殻式に比べて浮力が大きく、水上での走行性能が向上しています。この結果、艦の内部容積が増し、居住性が改善されるという利点があります。波九型以降、多くの日本海軍の大型潜水艦はこの複殻式を基盤として設計されるようになりました。

主機と武装

波九型の主機には石油機関が使用されており、これは以前のガソリン機関よりも安全性が高かったですが、後の潜水艦ではディーゼル機関が主流になったため、このタイプの機関は以降、他の艦で使用されることはありませんでした。

武装に関しては、艦首に2門の魚雷発射管があり、司令塔近くには外部発射管が備えられています。波9には水上部に4門、波10には2門が装備されています。波10（第15潜水艇）は初めは二等潜水艇として分類されましたが、1919年に三等潜水艦へと改分類されました。波9（第14潜水艇）は、竣工時から三等潜水艦に分類されていました。

諸元

以下は波号第十潜水艦の主な諸元です。

• - 排水量：常時450トン、潜水時665トン
• - 全長：56.74 m
• - 全幅：5.21 m
• - 吃水：3.10 m
• - 機関：シュナイダー石油機関2基2軸

- 水上出力：2,000馬力
- 水中出力：850馬力

• - 速力：水上17ノット、水中10ノット
• - 水中航続距離：111 km (60海里) / 4ノット
• - 水上航続距離：3,792 km (2,050海里) / 12ノット
• - 乗員数：定員39名
• - 武装：機銃1挺、45 cm魚雷発射管（艦首2門、水上2門）、魚雷8本
• - 安全潜航深度：40 m

同型艦

• - 第十四潜水艇（初代）

- 建造所：フランス シュナイダー社
- 命名日：1915年3月19日
- 進水日：1915年7月8日
- フランスに売却後、Armideと命名、1932年に除籍

• - 波号第九潜水艦

- 建造所：呉海軍工廠
- 命名日：1916年12月5日
- 竣工日：1920年4月30日
- 除籍日：1929年12月1日

• - 波号第十潜水艦

- 建造所：フランス シュナイダー社
- 命名日：1915年3月19日
- 竣工日：1917年7月20日
- 除籍日：1929年12月1日

参考文献

• - 雑誌『丸』編集部著『写真 日本の軍艦 第12巻 潜水艦』（光人社、1990年）
• - 福井静夫著『写真 日本海軍全艦艇史』（ベストセラーズ、1994年）

この艦級は、日本海軍にとって重要な技術的ステップを示すものであり、後の潜水艦設計に多くの影響を与えました。

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