波多野澄雄

波多野澄雄について

波多野澄雄（はたの すみお）は、1947年7月24日生まれの日本の国際政治学者です。日本政治外交史を専門とし、特に太平洋戦争期の外交や戦後日本の歴史問題に関する研究で知られています。筑波大学名誉教授であり、外務省『日本外交文書』編纂委員長、内閣府アジア歴史資料センター長などの要職を歴任しました。

学歴

波多野氏は、1966年に岐阜県立岐南工業高等学校を卒業後、防衛大学校に入学しますが、1968年に退学し、慶應義塾大学法学部政治学科に入学しました。1972年に同大学を卒業後、大学院に進学し、1975年に修士課程を修了、法学修士を取得しました。その後、博士後期課程に進み、1977年に単位取得退学。1996年に慶應義塾大学から博士（法学）の学位を授与されました。学位論文は『戦時外交と終戦構想、1941-1945』です。

職歴

1972年、外務省外交史料館の非常勤職員としてキャリアをスタートさせ、1979年に同館を退官。その後、防衛庁防衛研修所戦史部助手となり、1984年に同研究所の研究員に。1988年に同研究所を退官し、筑波大学社会科学系の助教授に就任しました。1998年から2012年まで同大学院人文社会科学研究科教授を務め、2012年に定年退職しました。

海外研究歴

1982年から1983年にかけてコロンビア大学東アジア研究所の客員研究員、1995年から1996年にはハーバード大学ライシャワー日本研究所の客員研究員として、海外での研究活動も行っています。

主な兼任・学外活動

波多野氏は、筑波大学において、大学院国際政治経済学研究科長（2001-2003年）、大学院人文社会科学研究科長（2003-2007年）、理事・副学長（2007-2009年）、学長特別補佐（2007-2009年）、図書館長（2010-2012年）などを歴任しました。

学外では、女性のためのアジア平和国民基金「慰安婦」問題資料専門委員会委員（1996-1999年）、昭和館運営有識者会議委員（2003年-）、文部科学省教科用図書検定調査審議会臨時委員（2004年-）、アジア歴史資料センター諮問委員会委員（2005年-）、日中歴史共同研究近現代史部会日本側委員（2007-2009年）、外務省参与、「核密約問題」調査委員会委員・座長代理（2009-2010年）など、数々の公的活動に携わっています。

受賞歴

1984年に阿南研究奨励賞、1991年と1996年に吉田茂賞（吉田茂国際基金）を受賞しています。

研究内容

波多野氏の研究は、太平洋戦争期における日本の対アジア外交構想の変遷を、外務省や軍部関係史料、大東亜省関係史料などを実証的に解明することに重点を置いています。また、官庁付属の研究機関での経験を活かし、公的な歴史事業にも積極的に関与しています。近年の研究では、これらの経験に基づいた研究も展開しています。

日本史教科書検定関連

波多野氏は、1984年の家永教科書裁判第3次訴訟で被告（国）側の証人を務めました。また、2007年の日本史教科書検定で沖縄戦における「集団自決強制」記述削除が問題となった際、教科用図書検定調査審議会の臨時委員として、検定意見の原案となる調査意見書を提出する文部科学省の教科書調査官も審議に加わっていることを証言しました。

著書

波多野氏は、数多くの著書を執筆しており、主な著書として、

『「大東亜戦争」の時代――日中戦争から日米英戦争へ』(1988年)
『幕僚たちの真珠湾』(1991年、2013年)
『太平洋戦争とアジア外交』(1996年)
『歴史としての日米安保条約――機密外交記録が明かす「密約」の虚実』(2010年)
『国家と歴史――戦後日本の歴史問題』(2011年、2022年)
『宰相鈴木貫太郎の決断』(2015年)
『「徴用工」問題とは何か――朝鮮人労務動員の実態と日韓対立』(2020年)
『サンフランシスコ講和と日本外交』(2024年)

などがあります。これらの著書は、日本の近現代史研究において重要な貢献をしています。

共著や編著も多数あり、幅広いテーマで研究成果を発表しています。

編纂史料

波多野氏は、歴史資料の編纂にも携わっており、以下の史料の編纂に関わっています。

『占領史録』(1981-82年)
『終戦工作の記録』(1986年)
『大本営陸軍部戦争指導班機密戦争日誌』(1998年)
『侍従武官長奈良武次日記・回顧録』(2000年)
『慶應義塾大学所蔵 村上義一文書』(2002年)
『金原節三 陸軍省業務日誌摘録 前編』(2016年)

これらの史料は、歴史研究において貴重な一次資料として活用されています。

波多野澄雄氏は、日本の国際政治学、特に近現代史研究において多大な貢献をしており、その研究活動は今後も注目されます。

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