洗馬宿

洗馬宿（せばじゅく）は、中山道六十九次のうち、日本橋から数えて31番目に位置する宿場町です。現在の長野県塩尻市宗賀に相当し、松本盆地の南端、標高750メートル前後の奈良井川右岸に開かれました。また、洗馬宿は北国西街道（善光寺道）の起点でもあり、交通の要衝として重要な役割を果たしていました。

歴史

慶長19年（1614年）の中山道経路変更に伴い、武田信玄が設置した伝馬宿が洗馬荘（本洗馬）から中山道沿いに移設され、宿場町として形成されました。これは塩尻宿、本山宿と同時期の成立です。江戸時代初期には、大久保長安によって初期中山道が整備されましたが、当初は下諏訪宿から小野峠、小野宿、牛首峠を通り、桜沢（塩尻市贄沢）を経由して贄川宿へと至る最短経路が用いられていました。

洗馬宿は、北国西街道が中山道から分岐する地点であり、善光寺への参拝客や物資の輸送で賑わいました。街道を通行する伝馬の荷物の重量を検査する「貫目改所」が設置され、厳重な管理が行われていました。

地名の由来は、源義仲（木曽義仲）の家臣が、近くの清水で義仲の馬の足を洗い癒したという伝説に由来します。古くは「洗場」とも記されていました。

宿場の様子

天保14年（1843年）の『中山道宿村大概帳』によると、洗馬宿には163軒の家があり、本陣1軒、脇本陣1軒、旅籠29軒が軒を連ね、宿内人口は661人、伝馬は50人50疋でした。慶應2年（1866年）には、吉丸屋の丸山左源太を中心に世直しを求める農民たちが蜂起した木曽騒動が発生しました。

脇本陣の旧志村家庭園は、芥川龍之介の短編小説『庭』のモデルになったとされています。脇本陣跡には、明治13年（1880年）6月25日の明治天皇巡幸を記念した「明治天皇御駐輦之處碑（一条実孝揮毫）」が建てられています。

史跡

洗馬宿には、歴史を物語る史跡が数多く残されています。

細川幽齋肱懸松
中山道・善光寺道追分（わかされ）
本陣跡
貫目改所跡
脇本陣跡
洗馬宿石碑
本山宿までの史跡
牧野一里塚跡

隣の宿

中山道：塩尻宿 - 洗馬宿 - 本山宿
北国西街道：洗馬宿 - 郷原宿

交通手段

鉄道：東海旅客鉄道（JR東海）中央本線・洗馬駅
バス：塩尻市地域振興バス楢川線と宗賀線で旧農協前 - 洗馬公園の各バス停

洗馬宿は、中山道と北国西街道が交わる交通の要衝として栄え、多くの旅人や物資が行き交いました。歴史的な史跡や美しい自然が残る洗馬宿を訪れ、往時の面影を感じてみてはいかがでしょうか。

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