津和野町津和野伝統的建造物群保存地区

津和野伝統的建造物群保存地区：時を超えて息づく城下町の面影

島根県鹿足郡津和野町に位置する津和野伝統的建造物群保存地区は、その名の通り、日本の伝統的な建築様式を今に伝える貴重な場所です。江戸時代初期に整備された地割がほぼそのまま残され、武家町、商家町、そして異彩を放つカトリック教会が調和した、独特の景観を創り出しています。2013年には、その歴史的価値が認められ、重要伝統的建造物群保存地区として選定されました。

地理と歴史

津和野町は、島根県の西端、山々に囲まれた盆地に位置します。保存地区は、その中心部、旧城下町の北部に広がり、津和野川と城山に挟まれた谷間にあります。この地は、かつて吉見頼行が築城した津和野城の城下町として発展しました。江戸時代に入ると、亀井氏が藩主となり、明治維新まで11代にわたってこの地を治めました。

保存地区内の地割は、元禄年間の絵図にも詳細に描かれており、江戸初期にはほぼ現在の形に整えられていたと考えられています。明治時代に入り、武家屋敷は姿を変えましたが、商家町は建て替えられながらも、江戸時代の地割を維持し、多様な町家が軒を連ねる景観を形成しました。

町並みの特徴

保存地区は、旧山陰道沿いに南北に細長く広がっています。地区の中央部から南側は「殿町通り」と呼ばれる武家町、北側は「本町通り」と呼ばれる商家町です。殿町通りには、津和野藩の家老を務めた多胡家の邸宅や、森鷗外を輩出した藩校養老館の武道場などが残り、武家町の面影を色濃く残しています。また、カトリック教会は、キリシタン弾圧による殉教者を弔うために建てられ、この地の歴史を物語る存在となっています。

本町通りには、商家が軒を連ね、切妻造桟瓦葺の家々が特徴的な景観を作り出しています。これらの建物は、幕末から昭和初期にかけて建てられたものが多く、赤茶色の石州瓦が美しいコントラストを生み出しています。

保存への取り組み

津和野町では、1973年に環境保全条例を制定し、城下町の歴史遺産や自然環境の保全に取り組んできました。その後、伝統的建造物の登録や修景事業などを通して、歴史的な景観の維持に力を注いできました。しかし、過疎化による空き家の増加が深刻化し、町並みの崩壊が懸念されるようになりました。そこで、2012年には「津和野町伝統的建造物群保存地区保存条例」を制定し、歴史を活かした町づくりと恒久的な町並み保存を目指すこととなりました。

保存地区内の文化財

保存地区内には、多くの文化財が点在しています。国の登録有形文化財としては、津和野カトリック教会、旧鹿足郡役所（現・津和野町役場）、分銅屋、古橋酒造場、河田家商店、俵種苗店、ささや呉服店、橋本酒造場、華泉酒造場、財間家住宅などがあります。また、国の登録記念物としては、田中氏庭園、財間氏庭園、椿氏庭園、岡﨑氏庭園などがあります。これらの文化財は、津和野の歴史と文化を伝える貴重な遺産であり、保存地区の魅力を高める要素となっています。

アクセス

津和野伝統的建造物群保存地区へは、JR山口線津和野駅から徒歩2分程度でアクセスできます。周辺には、津和野城跡、太鼓谷稲荷神社、鷲原八幡宮、津和野町郷土館などの観光スポットもあります。

津和野伝統的建造物群保存地区は、歴史と文化が息づく、魅力的な場所です。ぜひ一度、足を運んでみてください。

参考資料

津和野町「重要伝統的建造物群保存地区 津和野 TSUWANO」
津和野町「津和野町 津和野伝統的建造物群保存地区 修景デザインガイド」
津和野町「津和野町津和野伝統的建造物群保存地区保存計画」
津和野町「津和野 伝統的建造物群保存地区 まちづくりの手引き」
文化庁「新規選定 津和野城下に形成された土塀、水路が続く武家町と赤瓦の町家が連なる商家町 津和野町津和野伝統的建造物群保存地区」
文化庁「津和野町津和野（島根県）」
津和野町「津和野町伝統的建造物群保存地区保存条例」
文化遺産オンライン ／ 文化庁「津和野町津和野」
全国伝統的建造物群保存地区協議会「津和野町津和野」
津和野町公式「津和野町郷土館」

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