鷲原
八幡宮は、
島根県鹿足郡津和野町鷲原に位置する神社で、地元では「
八幡宮」として親しまれています。
津和野町の南部に位置し、
津和野城跡の南西麓に鎮座しています。
歴史
創建は
平安時代の
天暦年間(
947年-
956年)に遡ります。郷士である山根六左衛門尉が、豊前・宇佐
八幡宮から勧請したのが始まりとされています。その後、
弘安5年(
1282年)には吉見氏の家祖である頼行が、
鎌倉鶴岡
八幡宮から勧請し、3代目の直頼が嘉慶元年(
1387年)に現在の場所に社殿を建立しました。
しかし、天文23年(
1554年)には、陶晴賢による
津和野城攻めによって社殿を含む周辺の寺社が焼失。その後、
永禄11年(
1568年)に吉見正頼によって再建されました。正徳元年(
1711年)には
津和野城主・亀井茲親により大規模な改修が行われ、拝殿などが建てられました。
吉見氏断絶後も、津和野の守護神として歴代の藩主から崇敬を受けました。亀井氏の時代には、祇園社(現在の弥栄神社)、武霊社(現在の津和野神社)と共に
津和野藩の三大社とされ、その筆頭に位置づけられていました。
明治6年(
1873年)には村社に列し、近年では令和3年後半から保存修理事業が進められています。
祭神
鷲原
八幡宮の主な祭神は以下の通りです。
誉田別命(ほんだわけのみこと)
息長足姫命(おきながたらしひめのみこと)
玉依姫命(たまよりひめのみこと)
菅原道真(すがわらのみちざね)
吉見頼行(よしみよりゆき)
その他13柱
境内
境内には以下の様な施設や文化財があります。
流鏑馬馬場: 室町時代の原形を留める貴重な馬場(島根県指定史跡)
社殿: 本殿、拝殿、
楼門は国の
重要文化財に指定されています。
大杉: 御神木として祀られる巨木(町指定天然記念物)
境内社
淡嶋神社:和歌山県和歌山市の淡嶋神社より勧請。例大祭は7月3日。
稲生社:祭神は宇迦之御魂神
天満宮社:祭神は藤原道真
その他1社(祭神不明)
下山神社跡:かつての境内社
社殿
現在の社殿は、永禄11年(1568年)に吉見正頼が再建した本殿と楼門を基本としています。正徳元年(1711年)に亀井茲親が拝殿を建立し、手が加えられましたが、本殿と楼門は室町時代後期の建築様式をよく伝えています。
本殿、拝殿、楼門は一直線上に並び、拝殿と楼門の間には方形の池があり、潔斎橋が架けられているのが特徴です。本殿は石垣の上に建てられ、拝殿との間には石段があります。三間社流造、杮葺で、正面に向唐[[破風]]造の向拝を設け、外周に覆屋を構えています。
楼門は一間一戸の四脚門で、屋根は入母屋造茅葺、正面に片流れの檜皮葺の向拝が付いています。楼門の両脇には、桁行二間、梁間二間の杮葺の切妻造の翼廊が付いています。下層は土間で開放され、上層は板敷きで、周囲に刎高欄付の榑縁が廻っています。
拝殿は、入母屋造で破風に猪の目懸魚を吊る鉄板葺で、桁行3間、梁間2間です。内部は畳敷きの1室で、柱間装置は格子戸と格子窓で構成されています。南正面には擬宝珠高欄付の潔斎橋が架かり、東側面には神饌所が付属しています。
鷲原八幡宮では、毎年4月の第1日曜日に春の大祭として流鏑馬神事が奉納されます。この神事は、小笠原流古式流鏑馬として復活し、250mの馬場に設けられた3か所の的を射る伝統的な儀式です。
江戸時代には小笠原流によって盛んに行われていましたが、明治以降途絶えていました。昭和32年(1957年)に津和野弓道会同志が歩射流鏑馬を奉納し、その後、鷲原青年会有志によって春の大祭で奉納されるようになりました。1976年(昭和51年)には、30世小笠原清信が鷲原八幡宮を参拝し、小笠原流古式流鏑馬神事が復活しました。
流鏑馬では、鎌倉時代の狩装束を身につけた射手が馬を走らせながら矢を放ちます。この馬場は室町時代からの原型を残す横馬場形式で、島根県指定史跡となっています。
文化財
鷲原八幡宮には、以下の様な多くの文化財があります。
国指定重要文化財
八幡宮3棟:本殿、拝殿、楼門(2011年指定)
島根県指定史跡
鷲原八幡宮流鏑馬馬場(1966年指定)
津和野町指定文化財
鷲原八幡宮の流鏑馬神事(無形民俗文化財、1996年指定)
鷲原
八幡宮社殿奉納掲額(歴史資料、1977年指定)
鷲原八幡宮の大杉(天然記念物、1973年指定)
その他
楼門前には大島松渓作の狛犬が、客社天神前の石碑には三浦紫畹(しえん)筆の梅の絵が、背面に大国隆正の父である今井天柱(護斎)の碑文が刻まれています。
アクセス
石見交通バス「長野行き」乗車6分、「鷲原」下車すぐ
周辺施設
津和野城
太皷谷稲成神社
津和野町津和野伝統的建造物群保存地区
津和野町郷土館
外部リンク
鷲原八幡宮社殿 - 津和野文化ポータル
国指定重要文化財 鷲原
八幡宮社殿 -
津和野町
津和野 鷲原八幡宮 流鏑馬神事 - しまね観光ナビ
津和野町郷土館 -
津和野町公式