津照寺

津照寺の詳細

津照寺（しんしょうじ）は、高知県室戸市室津に位置する真言宗豊山派の寺院で、宝珠山（ほうしゅざん）や真言院（しんごんいん）とも称されます。本尊は楫取延命地蔵菩薩で、四国八十八箇所の第二十五番札所となっています。寺の本尊には「おん かかかびさんまえい そわか」という真言があり、そのご詠歌は「法の舟入るか出づるかこの津寺　迷ふ我身をのせてたまへや」となっています。

歴史

津照寺の創建に関する伝承によると、大同2年（807年）に空海がこの地域を訪れた際、山の形が宝珠に似ており、ここが霊的な地であると悟ったとされています。空海は宝珠に合わせて一刀三礼し、延命地蔵菩薩を彫刻し、堂宇を建立しました。この寺は『今昔物語集』にも「津寺」として登場し、その本尊の霊験が語られています。特に語り継がれている逸話には、本堂が火災に遭った際、地蔵菩薩が僧に姿を変えて村人に警告し、難を逃れたというものがあります。

また、平安時代の紀貫之は、承平5年（935年）に土佐の国司として5年間の任期を終え、帰京する途中に海が荒れたため、室津港に10日間も滞在したと『土佐日記』に記しています。さらに、慶長7年（1602年）には、土佐藩の藩主である山内一豊が室戸沖で激しい暴風雨に遭った際、見知らぬ僧が現れて船の舵を取り、無事に室津港に着ける手助けをしたという逸話も残っています。この出来事から、本尊の地蔵菩薩は「楫取地蔵」と呼ばれるようになりました。

神仏分離令により、明治4年（1871年）には廃寺となり、庫裡は一時小学校として利用されましたが、明治16年（1883年）に再興され、現在の姿に至っています。

寺院の境内

津照寺の境内にはいくつかの特徴的な建物があります。まず山門は、柱に屋根がついたシンプルな構造をしています。鐘楼門は本堂に上るための125段の石段の途中にあり、上部は鐘楼堂となっており、両側には仁王像が安置されています。

本堂は昭和50年（1975年）に再建され、標高34.5メートルの頂上部に建っています。また、大師堂は昭和38年（1963年）に再建され、稲荷社は本堂への石段の右途中に位置しており、稲荷大明神を祀っています。

境内には写経大師尊像や句碑、紀念碑も存在し、特に紀州備長炭の製炭技術を伝えた植野蔵次の記念碑が石段の下に建っています。参拝者は麓の山門を入ると右側に大師堂と納経所があり、左側には一木神社があります。正面の石段を登ると鐘楼門があり、125段を上ると本堂にたどり着きます。本堂からは室津港や太平洋の美しい景色が望めます。

交通案内

津照寺へは鉄道を利用する場合、土佐くろしお鉄道ごめんなはり線の奈半利駅からおよそ20.4キロメートルの距離です。バスで向かう場合は、高知東部交通の「室戸」バス停から徒歩約0.5キロメートルの位置にあります。車の場合は国道55号を利用し、室津の港まで0.5キロメートル程度のアクセスが可能です。また、周辺には一木神社があり、この神社は室津港の改修に貢献した一木権兵衛を祀る重要な存在です。津照寺は、歴史と信仰が息づく特別な場所です。

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