津軽じょんから節

津軽じょんから節

津軽じょんから節は、青森県津軽地方に伝わる日本の民謡です。地域によっては「津軽じょんがら節」とも呼ばれます。全国的に知られており、津軽三味線の伴奏で唄われるほか、三味線のみで演奏される「曲弾き」も広く親しまれています。「じょんから節」と略されることもあります。

解説

津軽三味線による力強く華やかな演奏が特徴で、「津軽よされ節」「津軽おはら節」と共に津軽三つ物の一つとして数えられ、その代表格とも言えるでしょう。

その起源は、北陸地方で瞽女や座頭によって唄われていた「新保広大寺くずし」という民謡が津軽に伝わり、発展したとされています。そのため、単に「じょんから節」という場合、津軽のこの津軽じょんから節を指すことが多いです。しかし、石川県野々市市の「野々市市じょんから節」、白山市の「柏野じょんがら踊り」など、他の地域にも「じょんから（じょんがら）」と呼ばれる歌が残っています。

津軽三味線による演奏は、時代とともに曲調が変化してきました。現代のじょんから節は、古来の「じょんから口説」とは異なっています。大きく分けて、新民謡が流行する以前（1887年頃より前）のものを「旧節」、昭和初期までを「中節」、それ以降（特に戦後）のものを「新節」と分類します。近年では、旧節のような民謡としての前弾きや伴奏に戻りつつも、盛り上がりを重視した「新旧節」も生まれています。

津軽じょんから節には、発祥にまつわる伝説が残っています。1597年、浅瀬石城主・千徳政氏が、大浦為信に討たれた際、為信は千徳家の墓を暴こうとしました。これに、菩提寺である神宗寺の僧侶・常縁が抗議したため、為信によって追われ、浅瀬石川に身を投げました。この場所は「常縁河原」と呼ばれ、後に「上河原」と変化しました。この常縁の物語を唄にした「上河原節」が「じょんから節」になったという伝説が語り継がれています。黒石市では、「上川原口説き」や「黒石じょんから」を津軽じょんから節の元唄としており、民謡家によって「津軽じょんから節発祥の地」の碑が建てられています。

21世紀に入っても、津軽じょんから節は広く演奏され、唄われています。2020年には、上妻宏光のアルバム『TSUGARU』に旧節、中節、新節が収録されました。

演奏

津軽じょんから節の特徴の一つは、即興演奏が重視される点です。戦前に録音された白川軍八郎による旧節の演奏からもわかるように、様々な節において即興演奏が行われていました。戦後、新節が流行すると、中節で使われていた三拍子の旋律的な装飾音は少なくなり、弦を強く叩く奏法が主流となりました。また、旧節や中節のように歌の構成が重視されるのではなく、前奏部分が重視されるようになりました。

また、津軽じょんから節では、津軽三味線のみによる「曲弾き」が盛んに行われます。発祥の地とされる黒石市では、毎年「本場津軽民謡全国大会」が開催され、「唄の部」や「踊りの部」に加えて、「三味線の部」でじょんから節の曲弾きの腕が競われます。津軽三味線の競技会である「津軽三味線世界大会」でも曲弾きが競われ、民謡を歌う場合は「唄付け」として区別されています。

歌詞

歌詞は七七調の口説き節で、様々な歌詞が作られています。上記で紹介したものは代表的な歌詞の一つです。

脚注

参考文献

町田 喜章、浅野 健二『日本民謡集』岩波書店〈岩波文庫〉、1960年。
浅野 健二『日本の民謡』岩波書店〈岩波新書（青版）〉、1966年。
仲井 幸二郎、丸山 忍、三隈 治雄『日本民謡辞典』東京堂出版、1972年。
グローマー ジェラルド (Gerald Groemer)「津軽三味線における即興演奏的要素の分析」『東洋音楽研究』第57巻、東洋音楽学会、1993年8月31日、41-61頁。

関連項目

* 弘前駅 - 発車メロディに使用されている。

もう一度検索